〜レクイエム〜

文章:イリヤ

闇・・・

闇に満ちていた・・・。

真っ暗なこの世界・・・。

ボクは逃げていた。

何から?

闇から。

どこへ?

どこかへ。

闇がボクを押し潰す・・・

恐怖が、苦しみが、絶望が

「お願い、誰か助けて・・・」

「助けて」

「助けて! ・・・・・・君」

え? 今、ボク、確かに誰かに助けを求めてた。

誰に?

と、突然、目の前が明るくなった。

ううん、ちがう。

眩しくなった。

光が猛威を振るう。

これでもかと言わんがばかりに・・・。

 

 

「祐一君!」

ボクは7年振りの再開を果たした男の子に後ろから抱きついた。

「うお!」

驚いた男の子はボクの方を振り返る。

うん、間違いない。祐一君だ。

「やっぱり祐一君だ」

「やっぱりって、お前、確認もしないで攻撃したのか」

「うぐぅ、攻撃じゃないもん」

そんな何気ない会話・・・。でも、ボクには何かが違っていた。

何が? って、聞かれても多分答えられない。

でも、妙な感覚。

『まるで自分が自分じゃないみたい』

感じた事を心の中で素直に復唱してみた。

うん、そんな感じ。

でも、何で?

結局、その日、答えは出ることなく日は沈んでいった。

 

 

また闇の中・・・。

逃げてるボク・・・。

変わらない。

そして光の強すぎる自己主張。

同じ事の繰り返し。

 

 

次の日、祐一君はボクを散歩に誘ってくれた。

この前の映画の誘いを断ったお詫びだって言ってた。

でも、多分、嘘。

ボク、なんとなくそう思った。祐一君は何か話したい事があるんだって。

公園のベンチに二人で座ると、祐一君が言いづらそうに話を切り出した。

「なぁ、あゆ」

「ん? 何?」

なんだろう、この胸騒ぎ・・・。

「あゆは・・・本当に、7年前に俺と一緒に遊んだ『あの月宮あゆ』なのか?」

「ふぇ?」

あまりにも突拍子もない、かつ、訳の分からない質問に思わずボクは間の抜けた返事をしちゃった。

「秋子さんから聞いたんだ」

祐一君?

「月宮あゆって女の子は7年前・・・」

そこまで言うと、祐一君、突然泣き出した。

「あゆは、7年前・・・」

もう一度繰り返す言葉・・・。

ボクは、祐一君の顔を胸に抱いた。

何でこんなことしたんだろ。自分のとった行動がよく分からなかった。

でも、少しでも祐一君の役に立ちたかった。ただ、それだけだった。

「あゆは、7年前に何が起きたか覚えてるのか?」

「祐一君と遊んだよ」

「そうじゃない。7年前に月宮あゆがどうなったか」

「・・・・・・。覚えて・・・ない」

正直な言葉。本当に覚えてないもん。

ドン!

「うわぁ」

祐一君がボクを突き離した。

「うぐぅ、ひどいよ」

「お前は・・・お前は誰だよ!」

え?

「ボクは・・・」

「お前は、あゆじゃない! あゆじゃない!!」

「ボクは・・・ボクだよ」

「違う! お前は月宮あゆじゃない! 勝手に人の名を語って、勝手に人の思い出を踏みにじって・・・

そんな事して何が楽しい!俺に恨みがあるのか!」

「本当だよ。信じてよ祐一君」

やだ、涙。

「泣けばいいってもんじゃない! こいつ、ご丁寧にあげれなかったカチューシャまでしやがって。そんなに俺が憎いか!」

「しん・・・じてよ。ボク、天使の人形だってもら・・・」

天使の・・・人形・・・?

あ・・・。

天使の人形・・・全てを、全てを1つに繋げる鍵。

無くしていた鍵。

全ては思い出される。

7年前の止まった記憶。

7年前の出来事。

「お・・・もい・・・だした」

「ボク・・・木から・・・落ちた」

「落ちて・・・」

今のボクの心には二つの事しかなかった。

「ごめんね、祐一君。せっかく危ないって注意してくれてたのに、ボク、言う事聞かなくて」

「ごめんね、祐一君。泣いてくれてたよね、祐一君。でも、ボク、何も言えなくて、何も出来なくて。ただ祐一君を悲しませただけで」

「ごめんね、祐一君。ボク、祐一君に何言われても仕方ないよね」

今のボクの心には二つの事しかなかった。

「ボクって、一体誰なんだろうね」

「月宮あゆはボクだけど、ボクは月宮あゆじゃない」

「それなら、ボクってだれ? ボクって、ここにいちゃいけないの?」

ボクの体が祐一君の手で引き寄せられる。

「分かってる、あゆがあゆなのは分かってる。俺が良く知ってる。月宮あゆがどんな子か。それが、あゆ、お前以外の誰でもない事も分かってた」

「許してほしいとは言えない。俺が弱かったから、また、あゆを悲しませた事」

「許してほしいとは言えない。あゆを疑った事」

「分かってほしいとは言えない。俺があゆを好きだという事」

ボクを抱きしめる力が苦しくなるくらい強くなる。

ボクは、祐一君の胸の中で精一杯首を横に振る。

「あゆ!」

強く、強く抱きしめてくれる祐一君。

でも、ボクがボクの存在に気付いちゃったから、もう、お別れだよ。

「祐一君。今まで、ありがとう。でも、ボク、祐一君の枷にはなりたくないよ」

ボク、笑おうと頑張る。今までで一番良い笑顔を祐一君にプレゼントしたくて。

最後まで笑える力がほしい。

最後まで笑っていられる力がほしい。

「だから、ボクの事、忘れてください」

泣いていた。

ボクは泣いてしまっていた。

どうしようもなく・・・悲しかった。

悲しくて、悲しくて、涙が止まらなかった。

そして、ボクの意識は涙と一緒に流れていってしまった。

だんだんと・・・。

でも、祐一君の腕の中で最期を迎えるなら・・・。

ばいばい、祐一君。

 

 

闇・・・

闇に満ちていた・・・。

真っ暗なこの世界・・・。

ボクは逃げていた。

何から?

闇から。

どこへ?

どこかへ。

闇がボクを押し潰す・・・

恐怖が、苦しみが、絶望が

「お願い、誰か助けて・・・」

「助けて」

「助けて! 祐一君」

だめだよ。祐一君はもう、ボクと一緒じゃないんだから。

思わずボクは苦笑いをしていた。

と、突然目の前が明るくなった。

優しい光。

全てを包んでくれそうな光。

ボクは手を伸ばす。

そして・・・。

 


「・・・あれ。ここは・・・」

真っ白な天井が目に刺さるほど痛い。

「おかえり。あゆ」

そこには、涙に顔をぬらした祐一君がいた。

「ただいま」

ボクは涙に顔をぬらしながら笑っていた。

この笑顔は、あの時、祐一君へ渡せなかったプレゼント。

そして、今までのボクへのレクイエム。

 

F I N


あとがき

えと、2時間で書いてしまったので、出来は良くないかも。

でも、半年のブランクがあるので、リハビリを兼ねて書いてますので、ご容赦ください。

あと、あゆがあゆらしくないかもしれませんが、あゆの心の中の描写なので、大目に見てください。

しかし、硬い文章ですね。イリヤって。

 

今回のテーマは、Kanonです。

え? Kanonのキャラをつかってるから当然って?

いえ、そうではないのです。

Kanonという曲。

簡単に言えば追いかけっこをする曲なのですね。(←はしょりすぎ)

ですから、文章のリフレインが多いです。

 

次回のテーマはLast regretsを予定してます。

          ※名古屋市に雪崩警報が発令。

それでは、ご縁がありましたら。

   20000605 20:18 イリヤ


戻る