前世の記憶

 

 

「……何で…俺達…敵同士になっちゃったんだろうな…」

「俺も、本当なら、お前とは戦いたくなかった…」

俺と北川は屋上へ来ていた。

むろん、二人でいちゃいちゃするためではない。

俺と、北川は、もう友達ではないのだ。

「…でも、こうなってしまった以上、北川、いや、ゴルディック、お前を倒す…」

「ああ、本気で来い、相沢…、いや、シルキィ…」

俺達は間合いを取り、互いに戦闘のかまえをとった。

「ちょっとあなた達、何してるのよ?!」

そこへ香里とかいう女が俺達の戦いの邪魔に入った。

「黙れっ!それ以上近寄ったら、命はない…」

香里は俺の語気に驚き、後ずさった。

「そうだ。俺達は前世の記憶を取り戻してしまった……。そして、相沢は、俺の…俺の一族を皆殺しにしたんだ!!許せるかよっ!」

ゴルディックは涙を流しながら俺を睨み付ける。あのときの目と変わらない、それが俺にはなぜかうれしかった。

「俺を倒してみろ…。できるならな…」

「あなた達、前世って…、一体何言ってるのよ?!」

「前世は前世だ。積年の恨み、今こそ晴らすっ!」

「ちょっと待って!」

香里はなおも俺達を戦わせたくないらしい。俺は苛立った。

「…ねぇ、あなた達そのポーズ何?」

しかし香里の真意は彼女自身の疑問にあっただけらしい。

「前世の俺のスタイルだ」

「俺もだ」

俺達は当然のように答える。

「…あなた達の前世は?」

「一反もめん」

「ゴルジ体」

「どういう関係なのよ」

ちなみに俺は手をひらひらとさせ、ゴルディックは床にはってうねうねしている。

もめんはシルクだからシルキィ、ゴルジ体だからゴルディック、ただそれだけのことだ」

「綿はコットンよ」

「なんだと?!」←気付けよ

じゃあ俺の名前は間違いでつけられたのか?!

「ところで、一反もめんって実在したの?」

「いや、架空の妖怪だが?」

「相沢君、自分の記憶に疑問もってないの?」

なにげに今、軽く自分の存在を否定してしまった気がする。

「実はちょっと不安になってきた!!」

「自信たっぷりに不安を強調しないでくれ」

とかいいつつもゴルディックの方も明らかに動揺をみせている。

うねうねしていたのが徐々に人間らしい動きに戻ってきたのがうかがえた。

「シルキィ…、貴様、俺の香里とおしゃべりに興じやがって…、許さんぞっ!」

「お前現世と前世が入り乱れてるぞ…」

「それと”俺の”ってのは間違いよ」

彼(北川とゴルディックが混ざっているのであえてこう呼ぶことにした)は記憶の混線が起きているようだ。

「どこがだっ!」

しかし彼は説得力のないポーズのまま叫ぶ。

「北川君、あなたのお名前は?」

「北川ティック前園」

「なんか新しいのが混ざってないか?」

誰だよ、前園。

「アホらし…。授業始まるから早く戻りましょ」

「あ、待ってくれ香里っ!いや、びよびよ系の女!

彼はすごいことになりました。

どうやら彼の前世では香里のような髪型は”びよびよしている”と表現していたらしい。

まあなんとなくわからないでもないが。

「相沢君、私は何をしたか言ってみて」

香里(びよびよ系)は彼を容赦なくボコボコにした後、俺に質問をしてきた。

そして、前世と現世で得た知識を組み合わせて考えると、彼女が何を言って欲しいかということくらいすぐにわかった。

「正当防衛」

「ありがとう、話のわかる人で助かるわ」

香里は落ち着き払った様子で屋上を去っていった。

俺の前世の”あの女”は香里だったのかもしれない、と思った。

 

 

「……やっぱさ、俺は現世に生きるよ」

彼はぐったりと倒れ、空をぼーっと見上げながらそうつぶやいた。

「そうか…じゃあ俺も忘れることにしよう」

俺達はやっぱり俺達だ。

前世のことで争うなんて馬鹿げたことだと、戦うことをやめた今になって気付いた。

「5時間目、さぼっちゃったなぁ」

俺は北川の横に寝っ転がって、言ってみる。

さぼったとか言っておきながらも、俺には罪悪感などなく、むしろ北川と和解できたことが良かったと思っていた。

「いいんじゃねぇの?たまには」

北川も特に気にした様子はない。

ただ北川の場合、単に勉強が嫌いなので、さぼれてラッキー、くらいにしか思ってないかもしれないが。

「でもさぁ、前世で面白かったこと、思い出したぜ」

「あ?なんだ?」

「三葉虫がデュデュンでトポッカジャックニストなんだぜ?アッハッハッハ!

「残念だが俺には理解できないな…」

文化の違いというやつだろう。

アッハッハと豪快に笑われても俺にはなんのことやらさっぱりだ。

デュデュンという言葉もトポッカジャックニストという言葉も知らない。現代語に訳されているのは三葉虫だけだ。

きっと他の二つはゴルジ体独自のものなのだろう。

「じゃあお前の方は何か面白いこと思い出したか?」

北川は俺のおもしろ話を知りたいらしい。

「うーん、俺は、前世か、それともそれより前のときかわからないんだけど…」

「ああ、それでもいいからよ」

「じゃあ、やっぱり気魂紋(きこんもん)かなぁ…」

俺がいつか遠い昔、どこか遠いところでやったような覚えのあるゲームだ。

「なんだそりゃ?」

「薄くのばした餅を右手に持って『ブンブンブーン』って雄叫びをあげながら念を飛ばすんだ」

「へぇー、なんのことやらさっぱりだ」

北川はそれでも楽しそうに聞いてくれる。

「だろう。俺達の一族独自のものだったからな」

俺はちょっと得意になってみせた。

「念が強いやつがやると念をとばした方向へ鮮やかな模様ができるんだ」

「すげぇな。たとえばどんな模様だ?」

「んー……そこまではちょっと…すまんな」

「そっか」

記憶にも限界はある。

「でもなんで俺達、突然前世の記憶なんて取り戻したんだろう…?」

「そういえば…」

今日の朝から俺は気分が優れなかった。

何かが渦巻いてて、気分が悪かったはずだ。

それが学校へ来て、北川を見た瞬間、テープが巻き戻されるような感覚に襲われて、いろんなことを思い出したのだ。

「俺もそうだ」

そのことを教えると北川も同じような状態だったと言う。

「きっと今日はエイプリルフールみたく前世カムバッキングデイなんだ!」

北川は全ての謎がとけたかのような笑顔で俺をのぞきこんだ。

「違うと思う」

俺は北川に負けないくらいかなりいい笑顔で彼の思いつきを否定した。

「じゃあお前はどう思うんだ?」

「…昨日の天気予報なんだったか覚えてるか?」

俺は逆に北川に質問してみる。

「晴れ、時々…前世…?」

北川は一字一句、ゆっくりと、神妙な面もちで答えた。

「そう、それだ」

「言われてみればそうだった…」

んなわけねーだろ。←ひどい

「北川君、祐一に操られてるよ…」

と、北川をうまく誘導したのに、ちょうどいいところで名雪が屋上へ来てしまった。

「ちっ、もう少しで北川をよくわからない結論に達しさせられたのに」

俺はオーバー気味に残念がってみせた。

「ねぇ祐一、それは祐一にメリットあるの?」

「あってたまるか」

「じゃあ俺は何のために…」

北川はちょっとひきつりぎみだったが、あえて無視した。

「祐一〜、6時間目はじまっちゃうよ。5時間目もさぼってたし」

どうやら香里からだいたいのことは聞いたらしい。

多分、香里は自分で俺達を連れ戻すのがアホくさくなって、名雪におしつけたのだろう。

「ああ、そんじゃそろそろ戻るか」

「俺は、アホなのか…?」

北川はなおもいじけている。

「アホはわかったから早く戻ろうよ〜」

目立たないところで悪態ついてるあたり、名雪らしい。

「そうだぞ北川、前世のお前ならこんなことで悩まなかったじゃないか」

「そうか、そうだな。前世で出来たことが現世で出来ないはずがないっ!俺は悩まないぞっ!」

北川を操るのは、赤子の手をひねるよりも簡単だと思う。

「そんじゃ、現世を送りにいくとするかっ!」

俺達は校舎へと入っていったのだった。

 

 

「まあ今日はそんなこんなで楽しかったですよ」

俺は夕食時に今日の出来事を話す。

名雪にはだいたい話したが、秋子さんにも是非話したかったのだ。

「前世、ですか」

「ええ、俺と北川は前世で敵でした」

「なんだか、映画みたいですね」

普通の大人なら真面目に聞いてくれることすらしなかっただろうが、秋子さんはやはり俺の話を聞いてくれた。

だからこの人は好きだ。

「じゃあ、私の前世は一体なんだったんでしょうね」

「もちろんそれは…」

 

俺はそのときとっさに言ってしまったのだ。

言ってはならないことを。

 

しかし、ここではそれを語ることはしない。

それはみなさんのご想像におまかせしたいからだ。

ただ、次の日の朝食がジャムごはんだったということだけはここに記しておく。

 

 

終わり

 

コメント:

どうもこんにちは、音速秘書です。

模試が終わって、ビデオに録った爆笑オンエアバトルを見ようとおもったら

時間がずれたらしくビバリーヒルズ青春白書がばっちり録画されてて、気分最悪です。

なので、そのリバウンド(?)として勢いにまかせて書きました。

何の話なんだか全くもってわけわかりません。

あっはっは。それではまた今度。


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