祐一の決めたこと

 

 

「ぼよぼよ」

俺は名雪のほっぺたをぶにーっとひっぱり、足払いをくらって頭をぶってから夜の学校へ赴こうとする。

「祐一、また出かけるの?」

「ああ。秋子さんにも伝えておいてくれ」

と、靴をはいてドアに手をかけると名雪が俺のジャンパーを引っ張った。

「ん?なんだ?」

「ねぇ祐一。なんでこんな時間に出かけるの」

「それはNATOがKGBと仲良く太極拳をやるのと同じことさ」

俺は話をはぐらかそうとした。

「ほんとのこと言ってよ」

だがあまりにもあからさますぎてウソだとバレてしまった。

「うーん、とにかく行かなきゃならないんだよ」

「だって祐一、昨日から風邪気味でしょ。ダメだよ、寝てなきゃ」

「……」

「………」

「……あ、十字軍の遠征だ!」

「え?どこ?」

「行ってきますっ!悪いな名雪っ」

「あっ、祐一!」

ばたん。

俺は一瞬のスキをついて家を出た。

「ふぅ…寒いな…。って当たり前か」

外に出た瞬間から俺を凍死させんばかりの冷気が包み込み、頬がびりびりする。

「……う、頭痛ぇ…。風邪引いてる上にさっき足払いで頭ぶったからな…。やっぱ寝てりゃ良かったかな…」

しかしそうは言っても家に戻る気は全くなかった。

俺は体を温めるためにも軽く走り出した。

何故俺はそこまでして夜の学校になんか行くのか?

そこには剣を振り回すちょっと時代錯誤気味の少女がいるからだ。

川澄舞。

それがその少女の名前だ。

俺はここのところ毎日夜の学校へ行っている。

よくわからないが、とりあえずそいつに会うために。

向こうも最近では俺がいることが別にイヤでもないらしく、それで俺は遠慮なく毎日会いに行っているのだ。

まず俺は夜食用の串カツを購入するべく、商店街へ向かった。

 

 

「しかし寒いの嫌いな俺がわざわざ夜の学校に行くなんて、どうかしちゃったかな。俺の精神構造は…」

吐く息も真っ白でせっかく買った串カツもどんどん冷気に当てられて冷めていく。

一度は暖まった体も、少し立ち止まればすぐに冷えきってしまう。

ジャンパーの中に入れてどうにか保温しようと思うのだが、時間との勝負だ。

「舞、待ってろよ!串カツ配達人が今行くぞー!」

俺は自分の寒いのも吹き飛ばす意味も含め、大声でそんなことを叫んで走り出した。

叫んだ後で、後ろに人がいないか確認したが誰もいないようなので安心した。

しかし夜の8時だってのに、通行人どころか車にも遭遇しない。

みんなこの寒さで固まっちゃったんじゃないかと思うくらい、静かだ。

「時間も寒さで止まっちゃってたりして」

そんなワケのわからないことを言いながら、一人でくすくす笑っていた。

と、そのとき、

「お、おおっ?!」

ずででっ。

「……っつー…今一瞬、頭がぐらっとしたぞ…」

走っていたら突然世界がぐらっと揺れ、バランスを崩してこけてしまった。

「いたたた…、くっ…、実は今の状態って結構ヤバイんじゃないか…?」

なんかすぐに息が切れるし、なぁ…。

だが、俺はそこでこけていてもしゃーないので再び立ち上がり、串カツがのしカツに変形してないのを確認してから、今度は歩き出した。

「舞、よくも毎日あんなところにいて風邪ひかねぇよなぁ」

やっぱアレだからか?

とか本人の前で言うと斬られそうだが、本人がいないので好き勝手言って、やがて学校へたどりついた。

門のプレートを見ると

”ナウなヤングの辿り着く場所”

「どこじゃここはーーー!!」

どうやら道を間違えたらしかった。

 

 

「ふぅ、やっと着いたぜ…」

俺はもうかなり限界近くなりながらも学校へたどり着いた。

息はもうハァハァいっている。

さらに串カツは完璧に冷えた。

時間はすでに9時近くなっている。

「ちくしょう…道間違えるなんて、ほんとにどうかしてるぞ、俺…」

ともかく愚痴っても仕方ないので昇降口で靴をはきかえて、いつもの場所へ向かった。

夜の学校というのはやはりいつ来ても気味が悪い。

こんなところに毎日居続けるのがいるなんて、今でも信じられないときがある。

「…アレ?いないな…いつもそこで変なのが立ってるのに」

かなり暴言なので、聞こえてたらつっこまれると思ったが、その気配もない。

「戦闘中か?」

と、立ち止まってみると遠くから俺以外の者が走っている音が聞こえた。

「あっちか…」

俺はいつもならその場所で待っているはずなのだが、その日に限って頭がぼーっとして、舞のいるところへ行こうと思ってしまった。

 

それが、間違いだった。

 

階段。

舞は今二階にいるのだろう。足音が近づいてくる。

なんだか、緊迫感のある空気が伝わってきた。

だが、近くまで来たなと思ったところで足音が消えた。

「幻聴だったってことはないよな」

頭が痛くて耳鳴りしていただけだったかもしれないとか、でも緊迫感は消えてないからいるはずだとか考えて頭がごちゃごちゃしてくる。

ともかく俺は不審に感じ、二階へ登ってみようと階段のところで曲がった。

だんっ、だんっ、だんっ。

俺が階段をのぼっている音ではない。

だんっっ

俺は足音のした上の方を見上げると、

「……舞?!」

「…祐一?!」

舞が、階段から降って……

俺はとっさによけようとしたが、頭がぼーっとして体が…

ざぐっ!

俺の左肩から胸の上あたりにかけて血が出た。

「…うあっ!」

ずだんっ。

だんっ。

俺はそのまま倒れ、また、舞もバランスを崩して俺におおいかぶさってきた。

「う…う……ぐ…」

痛い…。

なんだ…?

あ、そうか…舞に斬られた…か。

俺は血が出た理由として、舞に斬られたからだというのがやっとわかった。

「舞…ちょっと…どいて…くれ」

舞に斬られたその左肩が痛くて、他の部位も力が入らずどかすことができない。

「…ゆ、祐一…なんで…いたの…」

だが舞は混乱しているのか、俺の言ったことが聞こえてなかったのか、おおいかぶさったままどいてくれない。

「とりあえず…舞…。どいて…」

「…あ」

今度はわかったのか、舞は立ち上がり、血のついた剣を置いた。

制服にも少し血がついてしまったらしく、赤っぽくなっているところがある。

「祐一…なんで、祐一…」

それでも舞はうろたえて、”なんで”と”祐一”を繰り返している。

俺は舞がそういう状態だったから、逆に冷静でいられた。

他人が混乱するのを見て平静を保つ心理ってのは本当だと思った。

「あー…わかったから…。大丈夫…死なねぇよ…。あ、ちょっと起こしてくれ…」

「うん」

「”うん”じゃないだろ」

「はちみつクマさん」

「よし。そんじゃ起こしてくれ」

俺は無事だった右の方を差し出し、舞に立ち上がるのを手伝ってもらった。

「痛っ…」

舞がおおいかぶさったからか、右足の方も痛めたらしい。

さらに風邪のために頭も痛いんだから、もうボロボロだ。

「うあ…、串カツに血がついてる…」

串カツが入っていた袋に血がついて気持ち悪い。後で捨てよう。

「祐一…早く病院…。そうだ、病院行かなきゃ…。病院…救急車呼ぶ」

舞は表情こそそんなに変わってないが、言ってることがめちゃくちゃだ。

「バカ。今救急車呼んだらお前が学校にいるのバレるだろ…。それにそんなに重傷じゃないからな…」

だが俺とてこんなとこで余裕かましてたら出血多量で死にかねない。

ただ、舞がとっさに回避してくれたのか傷口はそんなに深くないらしく、自分で”俺はもうダメだ”というセリフを吐くほどじゃないようだ。

「じゃ、肩…」

「おう…肩貸してくれ」

舞が体を支えてくれて、一歩一歩ゆっくりと歩いて校舎を出た。

その間、魔物の出る気配がなかったのが幸いだった。

 

 

公衆電話でタクシーを呼び、病院まで運んでもらった。

そしてその結果、俺は左肩を包帯ぐるぐる巻きにされた。

傷口はそんなに深くなく、あわてるほどでもなかったらしい。

医者にケガの原因を聞かれたが包丁にタックルしたと言い、なんとか誤魔化した。

血も輸血が必要なほどは出なかったそうだ。(他人事みたいだが)

ただしばらくは安静にして、体育をやってはダメみたいだ。

剣で斬られてその程度とは俺も結構しぶといと我ながら感心した。

最後に、”保護者は?”とも聞かれたのだが、迷惑をかけたくないので、ちゃんと連絡しますと言って出てきた。

「どうもありがとうございました」

「…」

俺と舞は病院を出て、またタクシーを呼ぶことにする。

さすがに歩いて帰れるほど力が残っていない。

「はぁ…」

「……」

舞はうつむいてさっきから何もしゃべらない。

「しかし舞が降ってくるとは思わなかったぜ」

「……」

「俺を魔物と勘違いしたんだろ?それならしゃーない、勝手にフラフラしてた俺が悪いんだからな」

「……」

舞はそれでもしゃべらない。

「あー、しかしもったいなかったなぁ、舞がおおいかぶさってきたとき、尻くらいさわっときゃよかったぜ」

「……」

舞は顔を上げた。

「やっぱ斬られたんだからそのくらいさせてもらっても怒られなかっただろうに。惜しいことしたな」

「…それとこれとは別」

舞は暗いトーンのままそう言った。

「お、やっとしゃべったな」

「……」

別にしゃべられせたかったワケでもないが、なんとなく勝った気分になった。

「……祐一、ごめんなさい」

「…あ?気にするなって言ってんだろ。だいたい最初から危ないこと知ってて俺はお前のところに行ってたんだからよ」

「でも…」

これじゃ埒があかない。舞はいったん思いこむと止まらないからな…。

「それじゃ何か?やっぱりお詫びとしてエッチなことでもさせてくれるのか?それなら俺は元気になるぞ?」

「………」

「それがイヤならもう言うな。あ、タクシー来たぞ、乗れ乗れ」

「……」

 

 

家に着く頃には12時を回っていた。

すでに名雪達は寝ているらしく、静かだ。

俺はなるべく音を立てないようにして部屋へ戻る。

「はぁ…全く、なんで俺が斬られたのにあいつを励まさなきゃならないんだろうなぁ…」

ベッドにどかっと座り、今日の出来事を思い出してみる。

「舞が、降ってくるとはな…」

肩の中に生き物でもいるんじゃないかと思うような、ずきずきとした痛みが心臓の鼓動と同じタイミングで襲ってくる。

舞の前では、気にするなとかエッチなことさせてくれるのか?なんて冗談を言って余裕があるところを見せたが、それも舞がなるべく気落ちしないようにと思ったための演技だ。

あいつが一人で戦っていたことを考えると、俺の存在によって余計な悩みを増やしたくないからそういったのだ。

本当のことを言うと、滅茶苦茶痛い。

俺は血のついた服を脱ぎ(服が血で固まってて脱ぐとき痛かった)、包帯をながめながらつぶやいた。

「……やっぱり、言わない方がいいよな」

名雪に知られたらきっとものすごく驚くだろうし、秋子さんだって俺を預かっている以上危険な目に遭わせたくないと、俺が外出するのを止めることだろう。

だが俺はケガしようとも舞を見捨てることはできない。

だから二人には知られてはならない。

寝間着に使っているTシャツに着替えて血のついた服をとりあえずクロゼットにしまう。

明日にでもどこかにこの服は捨ててこようと思い、眠りについた。

 

 

 

ちゅんちゅくちゅんすかぴー。←スズメさん

………。

…………。

かちっ。

『朝だよー。昼だよー。夜だよー。あ、一日経っちゃった、おやすみなさーい』

「……朝か」

名雪の新しいバージョンの目覚ましメッセージによって目が覚めた。

今日も元気だ、と思いっきり起きあがってみると

「痛ぁ……ああ…」

しまった…ケガしてたんだ…。

俺は改めてゆっくり起きあがり、ベッドを降りた。

ただ、あの悪条件で風邪が治ったらしいというのは奇跡的だ。

今日はとりあえずそれでよしとしよう。

俺は名雪を起こし、二人に悟られないよう普通に準備をして、普通に学校へ向かった。

 

昼にいつものところで昼食をとったが、佐祐理さんにバレることもなく、なんとかしのいだ。

 

 

「……くぅ…、普通に過ごすことがこんなにも辛いとは…」

北川に肩をたたかれたり、香里がこういうときに限ってこけた拍子に俺にぶつかってきたりして、その都度激痛を、あたかもオーバーな表現をしているようにみせかけるのが大変だった。

オーバーなフリをするというのは結構難しい…。普通は逆だからな…。

一日が、長かった。

俺は誰にもバレないうちにさっさと家へ帰った。

 

 

「ただいまー」

俺は努めて明るく振る舞いつつ玄関のドアを開け、ようとした左手をひっこめて右手で開ける。

「あら、祐一さんお帰りなさい」

家に戻ると、すでに秋子さんは仕事から帰ってきていた。

朝はなんとかバレずに済んだ。

しばらくすればバレてしまうのだろうが、なるべくなら傷がもっと治ってからの方がいいだろうと特に根拠もなく思う。

俺は時間が長引くほど悟られる確率が高まるだろうと、さっさと部屋へ行こうと思った。

「ちょっと待って下さい」

「……」

俺が階段を登りかけたそのとき、秋子さんに呼び止められた。

もうバレている、そう直感した。

「肩、見せてください」

「………」

俺は観念してかばんを置き、制服を脱ぐ。

もうバレているんだから下手な芝居もせず左肩は使わないで脱いだ。

「やっぱり、ケガしてたんですね」

秋子さんは俺のぐるぐる巻き包帯を見てため息をついた。

「はい、昨日」

「勝手に見てしまってすいませんでしたけど、服、血がついていました…」

しまった…。

服を捨てるの忘れていた…。

「ベッドのシーツに、少しですけど血みたいなのがついていて、それでクロゼットを見たら血のついた服が…」

「……」

秋子さんは落ち着いてはいたが、俺を心配してくれているのがみてとれた。

「何があったんですか?」

絶対に、ごまかせない。

そういう語調だ。

「……俺、夜に学校行ってるんですよ。それで、ちょっとした事故があって…刃物で斬られたんです…」

秋子さんは、少し驚いたようだった。

「泥棒か何かですか?」

「いえ、そんなんじゃないんです」

俺は、剣を持った少女がいて、なんて説明できない。

「じゃあ、あの、病院はちゃんと行ったんですか?」

「ええ、しばらく無理はするなと言われましたけど」

あまり詳しいことは話したくないので最小限のことを伝えた。

「そうですか…。あの服は捨てておきました。あれじゃもうクリーニングにも出せないでしょうから」

「ありがとうございます」

深く追求せず、そして何も言わずに服を処分してくれた秋子さんに、俺は深々と礼をした。

「あの、すいません秋子さん。ただ一つ、名雪には言わないでください」

「…。わかりました」

秋子さんも名雪が知ったらものすごく心配すると思ったのだろう。

俺はもう一度礼をして部屋へと戻ろうとする。

「祐一さん」

「はい」

俺が返事をすると、秋子さんはややためらった後、

「今日も学校へ行くんですか?」

「………行きます」

「そう、ですか…」

秋子さんには悪いけど、それだけは引けない。

「無理はしないでください。私だって心配なんですから…」

「わかりました。それは絶対に約束します」

秋子さんは諦めたのか、俺が行くことを止めなかった。

俺は心の中で本当に秋子さんに感謝した。

 

 

「祐一ー、お風呂空いたよー」

「おーう」

部屋の外から名雪の声がするので、返事をする。

名雪はケガにまだ気付いていない。

夕食のときも秋子さんはケガについては全くふれなかった。

そしてもともと名雪が鈍いせいもあって俺を不審に思うことすらない。

俺は名雪にはバレることはないだろうとほとんど安心していた。

「さーて風呂風呂ー」

と、俺はそのとき重大なことに気付いた。

…包帯どうすりゃいいんだ?

外したらモロバレだし、それ以前に今の状態で風呂なんか入ったら傷口が痛くて叫びそうだ。

仕方ない、風呂は入らないことにしよう。

「祐一ー、お風呂入らないの〜?」

「あ、ああ。今日はあとで入るー」

「そう。わかった」

名雪は俺の部屋の前を離れて、自分の部屋へ戻ったようだった。

名雪ならどうせすぐ寝るんだからきっと俺が風呂に入ったか入らなかったなんてわからない。

「はぁ、この傷、早く治ってくれよ…」

俺は痛む左肩をさすりながら情けなくつぶやいた。

 

「そして8時になり申した」

「何言ってるの祐一。謙譲語マニア?」

いや、ただなんとなく言ってみただけなのに、そんなバカにしなくても…。

俺がリビングへ降りてくると、名雪も降りてきた。

秋子さんにもう一度礼をいってから出ていこうと思ったのだが、

「お母さんならさっき会社から電話があって出てったよ」

「あ、そうなのか。そんじゃ行って来ようかな」

「え?今日も行くの、祐一」

「もちろん。あもーれかるぱっちょ」

俺は夜の学校へ赴く前のいつもの小ネタをやることにする。(舞先輩の暇つぶし参照)

「もちはだ」

俺は名雪のほっぺたにあらかじめポケットにつっこんでおいたモチをびたっとくっつける。

「……祐一、毎日小ネタが尽きないね…」

「そりゃそうだ。小ネタは日課だからな」

俺は昨日と変わらないような適当なことを言ってそのまま靴をはいた。

ここまでは万事順調。

だったのだが、

「ん?祐一、何それ?」

「は?」

見ると、俺のジャンパーの左袖から白い紐がびろーんと出ている。

「………」

100%これは包帯だ。

「……こ、小ネタ」

と、ごまかすつもりが、逆に名雪の興味をあおってしまった。

「ちょっと見せて」

「あ、待て…」

だが名雪は俺がかわすまもなく包帯をびっと引っ張った。

「いってええええ!!!」

どんっ。

俺は名雪を右手で突き飛ばした。

ちょうど傷口のところがぎゅっと絞められたらしい。

思わず叫んでしゃがみこんでしまった。

「え?!何?!祐一っ?!」

「うっくぅぅ…」

名雪は突き飛ばされて何がなんだかわからないらしい。

「それ、包帯?!どうしたの祐一!」

だが、俺はそのまま逃げることもできず、痛みに耐えかねて思わず服を脱いでしまっていた。

「………」

俺は無言で包帯を直した。

「いつ、ケガしたの…?」

「昨日だよ」

名雪が心配そうに聞いてくるが、俺は不機嫌さを押し出して答えた。

「昨日の夜。学校でよ」

「なんで…?なんでそんな危ないことしてるの?」

名雪は俺の包帯を凝視して、泣きそうな声で言う。

「危険は承知でやってんだよ」

「やめてよ祐一。そんな危ないこと…だって、そんなに包帯巻いて…安静にしてなきゃダメだよ」

「そうもいかない。最初は遊びだったけどな。今はそうじゃない。もう引けないんだよ」

「誰が、誰が決めたのそんなこと。祐一、死んじゃうよ」

「俺が決めたんだ。誰にも強制なんかされてない。俺が決めたから行くんだ」

俺は名雪になんと言われようと絶対に諦める気はない。

「でも、そんな大けがするようなことして…」

名雪の声が震えている。目にも涙がたまってきていた。

このケガが思いのほか衝撃的だったらしい。

「祐一、何をしてるの…?」

「うちの生徒でさ。変な奴がいるんだよ。それで、そいつのためにどうしても、行かなきゃならないんだよ」

「あの、いつも朝一緒に行く人?」

そういえば、名前は知らなくても俺と一緒に登校してるのを見てるんだったな。

「そう。あれの背の高い方。そいつがさ、いるんだよ。一人で戦ってるんだ」

「何それ…。そんな物騒なこと、なんで祐一がまざってるの」

確かに名雪の言うことももっともだ。

「まざる必要なんてないんでしょ」

「知るかよ。とにかくほっとけないんだよ…」

俺は名雪の言葉にイライラしてきた。

「その子、おかしいよ。何で夜の学校でそんなこと…」

「……」

「昨日だって風邪ひいてるのに、祐一をそんな目に遭わせてその子何も思わないなんて、ひどすぎるよ」

「……」

「ねぇ祐一。その子、祐一のことなんて…」

「うるさいっ!何も知らないくせに勝手なこと言うなっ!!」

そして、俺はその瞬間、名雪に怒鳴っていた。

叫んだときものすごい痛みが走った。

それは、肩の痛みだけじゃなかった。

「……ひっ…」

名雪はびくっとなり、涙がぼろぼろこぼれだした。

ひくっ…ひくっ…と、嗚咽をもらしている。

「……行くからな」

俺は直した包帯がきつくならないように服を着直して家を出た。

思いっきり、ドアを閉めた。

 

 

 

 

ひくっ…ひくっ…

「……そうだよ……」

 

ひくっ…

「私は……何も知らないよ……」

 

 

ひくっ…

「祐一のこと……なんにも知らないよ…」

 

 

ひくっ…ひくっ…

「でも私は……」

 

 

ひくっ…

「私は……」

 

 

ひくっ…ひくっ…

「祐一が好きなんだよ……」

 

 

 

ひくっ…

「好きなんだよ……」

 

 

ひくっ…

「祐一が……」

 

 

ひくっ…

「いなくなったら…どうすればいいの…」

 

 

ひくっ…

「無理して…死んじゃったら…どうすればいいの…」

 

 

 

ひくっ…ひくっ…

「……行かないでよぉ………祐一……」

 

 

 

 

 

「………」

俺は、玄関のドアから離れ、学校へと走り出した。

今日も、舞は学校にいるだろう。

それだけを考えていた。

 

 

 

 

コメント:

え?何コレ?

誰が書いたの?こんなありがちな話。

こんにちは、音速秘書です。(いい笑顔)

なんかうちのHPに投稿されてくるSSがいい話多いので私も何かいい話を書いてみよう、と思ったのですが、

何をどこで間違ったのか、悲しい話になりました。

しかも構成もいい加減だし、祐一は斬られて血ィ吹いてるし。

”祐一の決心”を中心にして書いたつもりなんですけど、なんか、うまく文章にできない…。

祐一君は風邪ひいてもケガしても舞のところにいっちゃうんですねぇ。

名雪が可哀想です。

しかも玄関で名雪が祐一を好きだって言ってるのを聞いておきながら何も言わずに行っちゃうんだから、ひどいですね。(書いてる本人がいうなよ)

でも何故祐一はそこまでして舞のところへ行くのでしょうか?

理由は何にせよ、その祐一の決心が少しでも伝われば幸いですね。

 

といったところで、また今度。


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