疲れ気味な祐一と酒癖悪い佐祐理さんとはむはむな舞

 

 

「舞さぁ、腰使いがうまくなったよな」

「…そう?」

「そーだよ。最初の頃はぎこちなかったけど、最近はちゃんと前後に腰振るのも安定してきたぞ」

「でもまだまだ」

「それでも舞は結構覚えるのが早いと思うぞ」

「……」

「舞なんか剣振り回すくらいしか能がないと思ってたからなぁ」

「私だってあれくらいできる」

「ま、なんだって経験を積むほどうまくなるってな」

「………」

「今日もやるか?」

「………はちみつくまさん」

「はは、そーだと思った。じゃ、外行こうぜ」

「……外でするの?」

「いや、もう暗いし、平気だって」

「………」

「恥ずかしいのか?」

「…………」

「わかったわかった。でもなぁ、部屋でやるとなぁ……」

「佐祐理も一緒に」

「あ、そっか。佐祐理さーん、いいですかー?」

「何がですかぁー?」

「いわなくてもわかってるんでしょ、佐祐理さーん」

「あははー、じゃあ佐祐理も混ぜてください。今、洗い物終わりますから〜」

「わかりました。……と、そんじゃ先にやってるか」

「……」(こく)

 

「ところで舞、フラフープどこに閉まってあるんだ?」

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

と、俺はフラフープでいい汗かいて、今は風呂に入っている。

屋内でやると家具にぶつかったりしないか心配だったのだが、今日は無事だった。

ここはとあるアパート、”高級マンション”だ。

高級マンションという名前のアパートなのであって、高級マンションではない。

大変センスの感じられるネーミングだと思う。

最初に大家さんに会ったときは、思わず

「頑張ってください」

と真顔で言ってしまったほどだ。

だが、現在佐祐理さんと舞の3人でここに暮らしていても特に狭いとか汚いとか感じないところを見ると、

一応大家さんなりに高級マンションにも負けないくらいのアパートだという自負はあるようだった。

「…ふぅ、やっぱり風呂は一番風呂が……よかったなぁ…」

俺は3番目でちょっと感動が薄れつつ浴槽につかる。

先に入ったのは順に佐祐理さん、舞だ。

やっぱ汗かいて気持ち悪いだろうから、女の人が先に入った方がいいでしょう、なんて言ってしまった自分が恨めしい。

二人の後に入れるんだったらむしろありがたいじゃないかという意見もありそうだが、実際そうなってみるとはっきりいって面白くもなんともない。

俺が面白いと思うのは一番風呂のときか舞や佐祐理さんが一緒に入ってくれるときだけだ。

しかも一緒に入ってくれたこともなければ入ってくれそうな雰囲気も全くないので実質俺が面白いと感じるのは一番風呂だけということになる。

っつーかそんな簡単に風呂一緒に入ってくれるような女がそこら辺にいたら俺はむしろ引くだろうが…。

「ばーばべばぶぶぶぶぐぐぐぐぼぼびぇーーーー」

俺は浴槽に顔をつけて奇声を発してみる。

とても楽しい。

「ばびびびびぎゅーぎゅーう゛ぇーーーーーーーぶぐでゅー」

どうやら俺は一番風呂じゃなくても面白い風呂の入り方を発見してしまったようだ。

「う゛びゃあああああばばばば〜〜」

……。

「ぺぺぼーーぼぷるるる〜〜〜〜」

……。

うん、どーせだから何か普段言えないようなことを思いっきり言ってみるってのも一つの手かもしれないな。

……よし。

「ばびーーーー!!ぼばべばーーーー」

…ちょっと恥ずかしくて言えない。

やはり何を言ってるか他人に聞こえなくても恥ずかしいもんは恥ずかしいんだな。

また一つ勉強になってしまった。

よーし、次を最後にしよう。

「ばう゛ぁがばーーーー…ぶぐっぐぼっ!!」

!!!

「…げほっげほっ…ぐっ……はぁ…はぁ…」

ほんとに最期になるかと思ったぜ……。

一歩間違えれば風呂でくしゃみついでに溺死なんて例えシャーロックホームズでも解決できないような難事件をつくりだすところだったな、俺。

「……さて…風呂出るか…。これ以上入ってると命危なそうだし…」

俺はざばーっと浴槽から勢いをつけて立ち上がろうとする。

「……あ…立ちくらみ…」

ごん。

「っつー…。今日はほんとに風呂が危険区域だな…」

俺は立ちくらみにより後ろに倒れ、壁に頭を打った。

そして、ちょっと涙目になりながらもう一度立ち上がり、風呂を出た。、

 

 

「はぁー……ビールないですか?佐祐理さん」

俺は全裸のまま押し倒して佐祐理さん漁り…、などということはせず(当たり前)に寝間着用の服を着て普通に冷蔵庫を漁ってみる。

「あははー、未成年はアルコール禁止ですよー」

佐祐理さんは明日の弁当の下ごしらえをしつつ言う。弁当づくりも当番にしようと思ったのだが、これだけはやりたいとのことで佐祐理さんが毎日担当になっている。

「佐祐理さんだって未成年なのにめちゃくちゃ飲んでるじゃないですか」

「大丈夫です。佐祐理の体はもう大人になってますからー」

さっきのこともあってか、なんかとっても心惹かれる発言な気がするのは俺だけだろうか。

「…っつーか佐祐理さん、酒くさい」

「えー?日本酒ちょこっと飲んだだけですよ、ちょこっと」

そういう佐祐理さんの頬はほんのり桜色。を、越えてかなり赤くなっている。

「おい舞、佐祐理さんさっきまで酒飲んでたか?」

俺が冷蔵庫から仕方なくグレープフルーツジュースを取り出すとついでに飲もうと思ったらしく隣にきていた舞に聞く。

「すでに一升瓶かかえてた…」

「……」

「あ、あはは〜。祐一さん、あんまり気にしちゃダメデスヨシダ〜」

「誰すか、ヨシダって」

「佐祐理、お酒飲んでるときは料理やめたほうがいい」

舞もさすがの佐祐理さんでも飲酒料理は危険だと思っているらしい。

この点では俺も同感だ。

「でも明日のお弁当の下ごしらえしないと」

「別に1日くらい学食行けばいいんですから」

「そーですかぁ?じゃあお言葉に甘えて明日はおべんとお休みにしますね〜」

そういうと佐祐理さんは途中まで料理していたものをヘラヘラしながら適当に皿に盛って片づけ始めた。

きっと明日になったら全部忘れて『この変な盛り合わせ何ですかぁ?』って俺に聞いてくるに違いない。

そして俺は言うのだ。

「変な盛り合わせです」

と……。(恍惚とした笑み)

なんだかひねりがないような気がするが、俺にはこれがベストに思えてならなかった。

「ふぅ、それじゃあ舞、お酒ちょーだーい♪」

佐祐理さんはまだまだ飲むつもりらしかった。

なにげに3人のうちで一番酒を飲むのが佐祐理さんだったりするから世の中恐ろしい。

舞は飲めるには飲めるようだが、自分からはあまり飲もうとしない。

そして俺はというと、実はあんまり飲めない。せいぜいビールやそこらが限度だった。

「ねー、舞ー」

「佐祐理、もうこれ以上飲むと肝硬変になる」

「いくらなんでもそこまでひどくないだろ」

舞の言うことはいつも極端すぎる。俺がつっこみ役に回るのだからよっぽどだ。

「うー、舞ー、ひーどーいよー。佐祐理はお酒飲みたいーよー」

「なんかどんどんしゃべりがひどくなってきてないか?佐祐理さん」

「お酒は時間差がある者だから…」

「者じゃなくて物だ」

「祐一は細かい」

「正しい日本語を使え」

「私の日本語間違ってる?」

「たまにな」

「じゃあ佐祐理の日本語は?」

「間延びした日本語だ。正しいかどうかは危うい」

「うぐぅは日本語でどういう意味?」

「あれは日本語ではなくただの造語だ。日本人が意味もわからず”ボンゴレカルパッチョナリー!”と叫ぶのと同じだ」(どう同じなんだ?)

「ニュアンス的には?」

「”最低、だいっきらい”から”だから祐一くん大好き♪”まで発音の仕方によって意味合いがかわるからなんとも言えない」

「だおーは?」

「接尾語だ」(そうなのか?)

「意味は?」

「皆無だ」

「じゃあなんで名雪さんは使うの?」

「口癖なんだろ」

「そう…」

「うーー、佐祐理が話から置いてかれてってますー…」

俺と舞で一対一のトークを繰り広げたため、酒酔い佐祐理さんは展開の早さについていけなかったようだ。

「まあそんなこんなで俺の日本語講座は終わりだ」

むしろいつ始まったのかがよくわからないが、とりあえず日本語の話はここで終わりにした。

「とにかく、佐祐理はもうお酒飲んじゃ駄目」

「はーい…わかりましたー…」

佐祐理さんは微妙に拗ねていた。そんなに酒飲みたいか、お嬢様。

「あ、笑う猫の冒険」

「ん、もう8時か」

舞が時計を見て突然言い出した。

笑う猫の冒険とは日曜8時にやっているおもしろ番組だ。

今時コントをやっている番組なんてなかなかないので俺の中では重要文化財に指定されている。

「ふふー、佐祐理もコントできますよー」

……佐祐理さんがだいぶ壊れてきたな。

俺が、わかりましたから、と言う前に佐祐理さんは勝手にテレビの前に立ってコントをやりはじめてしまった。

「魔法師団長ー!総統が怒っていますー!」

「ど、どれぐらい怒ってるんだー?」

「相当」

「…………」

「……」

俺も舞も、全くコメントできなかった。だが佐祐理さんは、

「あははー、コントは楽しいですねー」

かなり満足して席に戻った。

というかただの駄洒落だということに、本人は気付いていなかった。

なんか目もとろんとしてきているし、また俺にからんでくる。

「ふー、ふふふー、祐一さん、佐祐理の事本当はどう思ってるんですか〜」

「こんなに明るく楽しく酒癖悪い人も珍しいと思ってます」

俺は本当の事を言った。

「うー、そーですかー。佐祐理は祐一さんの右側が好きですよ〜」

意味がわからない。

「舞、俺の右側って何だ…?」

「……さあ?」

やはり舞でもわからないらしい。ただでさえ現代人らしからぬお嬢様は酒に酔うと意味不明というよりない。

「あーもう佐祐理さん、笑う猫見ましょうよ〜」

「あ、そうですね。あははー」

素直にそういうとテレビの方に向き直ってくれた。

これでやっと”アナウンサー大学”が見られる。(俺の笑う猫コントランキングで1,2位を争うやつなのだ)

なんか随分と首がすわってないような気がするけど、まあいいとしよう。

「祐一……」

「ん?」

今度は舞がソファーでやっとこさくつろぎモードに入った俺の服を引っ張る。

「はむはむ」

「…お前さぁ、もうそろそろ飽きろよ」

「はむはむ」

「わかった…。ほらよ」

俺はため息をつきつつ腕を出す。

するといつものように舞が俺の右の袖をちょこっと噛む。そして噛んだままテレビの方を向く。

「…うう…、よだれがつくんだよ…」

舞は最近テレビを見るとき、俺の服を噛む癖がある。なんかしらんが俺の服を噛むと落ち着くらしい。

そして舞はそれを通称”はむはむ”と呼んでいる。

「あははー、二人とも仲良しですね〜。でも佐祐理はむしろお酒と仲良ししたいです〜」

「そんな悠長なこと言ってないで、やられる方の身にもなってくださいよ……」

名前はかわいいがやられるほうはとてもうれしくない。1時間近くもそうされていると服がよだれでひどい有様になってしまうのだ。

まあ北川にやられたとしたら即刻、釜ゆでの刑に処してやるんだろうけど、相手が舞だとそこまで鬼になれない…。

しかし少しくらいの仕返しくらいはしておかないと気が済まないのも事実だった。

「……」

ぐぃんっ、と手を挙げると舞は引っ張られた。

「あっはっは、舞の一本釣り」

でしっ。

「……テレビ見るから」

かなり鋭い眼光とともにつっこみチョップをくらい、俺は少しの仕返しすらままならないことを改めて知った。

「祐一さん、ちょっと涙出てますよ」

「……」

 

 

1時間後。

「ふはー。寝言ですーー…。すー…すー…」

佐祐理さんは案の定寝ていた(?)。

舞は大変噛み心地が良かったらしく俺の服の袖はかなり劣悪な状況になっていた。

「うう……気持ち悪い…」

明らかに右の袖の方が重い。水分の吸収によって質量が大きくなったということは明白であった。

「……あー、とりあえず佐祐理さん布団に運ばないとな…」

「寝てますよ〜…すー…すー…」

ほんとに寝てんのかな、この人…。

「じゃあ私が運ぶ」

「ん、それじゃ俺はちょっと着替えてくる…」

 

 

「なんだかんだいっても舞の相手してると飽きないな、ほんと」

佐祐理さんを布団に運んだ後、勉強もしたくないし、なんだか眠いしということで結局みんな寝ることにした。

「……面倒?」

俺らは部屋の入り口から見て、俺、舞、佐祐理さんの順で並んで寝ている。

電気を消してあるので当然暗い。

「面倒ったら面倒だけど、いやぁ、この家から出て行けって言われても出ていきたくないって感じだな。アハハハ」

佐祐理さんがすでに眠っているので笑ったりしたら起きちゃうだろと思うかもしれないが、佐祐理さんはそんな人じゃない。

一度寝たら、自分で目が覚めるまで待つか、たたき起こすか酒を隣に置くかしか起こす方法がないのだ。

「…イヤになったら出ていく?」

「あーのさー、そんなまともに言われると気恥ずかしいからやめろ。それに、俺が出ていくわけねーだろ」

「だって、佐祐理も大切だけど祐一がいなくなったら私はどうすればいいかわからなくなりそうだから」

「だからまともにそういうことを言うなって。絶対出ていかねぇっつーの」

「……」

俺は天井を見ていたが、舞の方はじーーっと俺のことを凝視している。それもかなりの至近距離で。

ケンカ売ってるのかと思うくらいだ。

「お前さぁ、昔いっぱい苦労したんだからそのねぎらいくらい俺にやらせてくれよ」

ちゃんと目を見て言わないと信用してくれなさそうなので俺はごろんと横を向く。

舞と目が合う。

こういうとき、普通はドキッとするのが定石だが、むしろ舞の目つきが怖くて別の意味でドキッとした。

「昔のことなんてどうでもいい」

「ん?なんで」

「私は今ここにいてくれる祐一がどんな過去より大切だから…」

「……舞」

「…………」

「なんか悪いもん食ったか…?」←鬼

俺がそういうと舞は俺の布団にもぐりこみ、突如抱きついてきた。しかも足をからませてくる当たり、サービス精神も旺盛と見える。

俺はいきなり理性をふっとばされそうになった。

「……おおぉ…ぃ、舞…。いきなり何を…」

そうはいいつつも俺の体の方は瞬時に舞ちゃんにレッツゴーな感じ(意味不明&大バカ)120%状態となった。

だが、舞は俺のことをぎゅーっと抱きしめたかと思うと、

「…はむ」

服を、噛んだ……。

「うわっ!服噛むなっ!」

「油断した祐一が悪い」

抱きつかれるだけなら大歓迎なのだ(気持ちいいし♪)が服噛まれるのはイヤすぎだ。

ふりほどこうとしても舞が俺のことをかなりの力で抱きしめているので、なかなかふりほどけない…。

俺の肩のあたりはその間にも舞のだ液に腐食されていく。ひどい。

「せっかく真面目に言ったのに祐一がやめろって言うから。はむはむの刑」

「は、離してくれ……」(泣きたい)

「…絶対離さない」

「なんか、肩がどでれぇぇ〜って、水分が伝わってくる……。お願い…離して、舞ちゃん…」

 

 

よくわからないことをしながら(されながら)、日曜の夜はふけていく……。

 

 

「離したくない……ずっと……」

「やっぱ変なもん食ったろ、舞」

「……これから祐一を食い殺す」

「はぅ…」

 

 

「すー…すー……。二人とも仲良しですね〜♪佐祐理の寝言でした〜………すー…すー…」

 

 

終わり

 

 

 

コメント:

普通の時間帯に読んでくれたみなさんこんにちは、テレホタイムとか、主に夜っぽい時間に読んでくれたみなさんこんばんは、朝っぱらから読んでくれた人はいないと思うのでおはようは言いません(最低)、音速秘書です。

今回冒頭は肩すかしから入ってみました。

で、前半は祐一の謎な入浴シーン、中盤は佐祐理さんの酒癖悪いぞシーン、後半は舞が祐一食べちゃうぞシーン(?)と、一応わかれてます。

まあ、内容はいつも通り、内容を要約しろっていったら重要な部分はどこなんだろうって悩んでしまうくらいどーでもいいことばっかりですね。

そんで、舞が最後の方で「私は今ここにいてくれる祐一がどんな過去より大切だから…」と言っているのは私が好きなアーティストの曲の1フレーズを拝借してちょっと変えてみたものです。

元のフレーズを書くとJASRACにお金とられちゃうので書きませんが、もしどのアーティストの曲か知りたければメールでも下さい。(いねーよ)

 

ま、そんなところで、また今度。


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