授業変更

 

 

「出でよ、モンブラン北川ーー!!」←よくわからないネーミング

「ソリマチソリマチ!!」←とびはねてる

「おはよう」

「おう、おはよう」

俺はそろそろ北川が学校に着くんじゃないかと思い、勘でタイミングをはかって北川を呼んでみた。

タイミングはばっちりで、俺が呼んだ瞬間、北川は教室に入ってきた。

「よく俺がくる時間がわかったな」

「友達ならそれくらいたやすいことだろ。気だよ、気を感じ取れば誰でもできるって」

「それもそうか」

「言っとくけど、あなた達だけよ」

「……」

「…………」

香里のつっこみはストレートすぎてむしろ清々しささえ感じさせる。

「2人ともいつもながら朝からテンション高いね」

対して名雪はいつものように俺らのテンションに感心する。というか毎日感心してばっかりだ。

「当然だ。朝から陰のオーラを身にまとってたまるか」

「そう。これから面倒な授業があるんだから少しくらいテンションあげても罰は当たらないだろ」

「あたしは上げすぎだと感じてならないんだけど」

「別に香里はテンション上げなくていいと思うぞ。むしろ香里が『きゃっほー!あたしかおりん、バームクーヘン最高!』とか言いだしたら怖いからな」

うん、怖いというか危なくて近寄れないな。

「なんでテンション上がったあたしがバームクーヘンを元気いっぱい推奨してるのよ……」

「いやいや美坂、今のはただの凡例だから細かいことを指摘しちゃいかんぞ」

北川がちっちっ、とキザっぽくやるが、手の位置が口元ではなく目の付近で且つ手のふりが大きいため、車のワイパーみたく見える。

要するに所詮北川だということだ。

「テンション上がった水瀬さんなんか怖そうだな」

「そう?」

「確かに名雪もテンション上がったら『なゆちゃん大回転だお〜〜。ぐるるるる〜〜ん』とか言い出す可能性がないとはいいきれん……」

「テンションの如何を問わず言わないよ」

「ええ、いくら名雪でも突然大回転はじめるほどぼけぼけしてないわよ」

「美坂、それフォローか?」

「北川くんは黙ってて」

「へい」

名雪はひどいよ、と口をとがらせて言う。

「あはは、ぐるぐる名雪3分10円とかで商売できねぇかな?」

「なんで私が市内電話並の料金でぐるぐる回らなきゃいけないの」

「きっとあまりの間抜けさに大好評だと思うが」

「やだよ〜」

と名雪は間延びした言い方で拒絶する。

 

キーンコーロカーンコーロ。

 

「あ、チャイム鳴ったか……」

「仕方ねぇ、適当に授業でも受けるか」

俺と北川はほぼ同時にため息をついた。

 

 

〜〜昼休み

「あんパンおいしいほいさっさ。北川何食べてるほいさっさ」

「肉ピーマン肉パン」

「なんで肉が二回?」

「食べすすめると、肉の次にピーマンがきてそれを食べるとまた肉が現れるパンなんだ」

「へぇ」

なんてわかりやすいネーミングなんだろう。でもその理論でいくと金太郎飴は金太郎金太郎金太郎金太郎金太郎(中略)飴になっちゃうな……。

「ところで北川、面白いこと思いついたぞ。まず飯を食っちゃおうぜ」

「お?おう」

俺達ははぐはぐとパンを食べた。

(はぐはぐ。はぐはぐ。はぐはぐ。はぐはぐ。はぐはぐ)←食べてる

「よし食べたぜ。で相沢、思いついたことってなんだ?」

そういうと、俺はバッグから純米酢を取り出した。何故バッグに?とかつっこんではいけない。

「においかいでみろ、おもいっきり」

北川の鼻先につきつける。

そして北川は本当におもいっきり息を吸い込んだ。

「げほっげほげほっごほほっ」←大バカ

「あっはっはっは!バカだなーー!」

「ちくしょー、相沢、お前もやれ……げほっ」

と北川が涙目で酢を俺の目の前にやるので、俺も……。

すううううっ。

「うげほっげほっげほっぐがっ」←大バカ

「わっはっはっはっ!お前こそバカだーー!」

「「以上、酢コーナーでした」」

「何が言いたいのよ」

「御飯食べたばっかりなのに落ち着きないね、2人とも……」

香里と名雪はまだゆっくりとパンを食べている。今日は学食の混み具合が異常で仕方なくパンを購入して教室で食ってるのだ。

「いやぁ、勉強疲れは人格をも左右するからなぁ」

「きっと測定したらよくわからない波が脳内をかけめぐってるに違いないだろな、美坂」

「あたしに同意を求めないで」

ほんとに遠回しにいうことを知らない奴だな……香里って。

「でもよぉ、何で授業中は黒板の方を向いて座らにゃならないんだ?」

俺の中にちょっとした疑問が浮かんだ。

「むぅ、確かに」

俺の発言を聞いて北川も神妙な顔をする。

「ここはやはり我らの手で愚かな常識を覆さねばならないのではないか?」

「おう!」

「また何を言ってんだか……。名雪、よく相沢くんと一緒に住んでられるわね」

「発作だと思えば平気だよ」

なんだか脇で無礼なことを言ってる奴がいるがあえて無視する。

「というわけで常識に疑問を投げかける第1弾!」

「おう!」

「まずイスを90°倒す!」

「おう!」

がたん。

がたたん。

「そして座る!」

「おう!」

すちゃっ。

すちゃっ。

「相沢!つまり俺らは座ると天井を向くことになるんだな?!」

「そう、これがいけないことだと誰が決めた!」

「そうだ、多数派の人間の無難を求める心理によっていつの間にかこれが”常識”になってしまっていただけだ!」

「この常識からの何とも言えぬ開放感!」

「おう!」

「頭に血が昇ってワケわかんなくなってるんじゃない?」

「そういうつっこみを入れるな、香里!」

「そうだ!確かにちょっと頭がぼーっとするけどな!」

「……」

「天井に黒板をとりつければなんと授業も可能だ!」

「しかし相沢!チョークの粉がふってくるのでは?!」

「大目に見ろ!」

「おう!」

「これなら首も疲れない!」

「ウルトラ画期的!」

「さらにあわよくば普通に重力に逆らって歩く女子のスカートの中が見えることもしばしば!」

「ミラクル!」

「あなた達の思考がミラクルよ……」

「祐一、そんな風にしてたら怖くて女子以前に人間がよりつかないよ……」

「大丈夫、俺がちょこっと街頭演説をかませば少なくとも8割の男子は俺らに続くだろう」

「うむ、世の中ぱっぱらぱーばっかりだからな!」

「あなた達にぱっぱらぱーって言われたら自殺したくなるわね……」

酷い。

「相沢!問題発生だ!水瀬さんの予想通り、早速美坂と水瀬さんが警戒して近寄ってこない!」

「笑顔だ!」

「おう!」

逆効果だった。

「ねー、祐一、なんか顔が真っ赤だよ」

名雪は俺らとかなり離れた位置から呼びかけてきた。隣では香里が不信感全開の目でこっちを見ている。

「むぅ、本当に頭に血が昇ってきた……」

「このイス90°倒しは実用性の低さが難点だな……」

「この企画、真琴に、もとい誠に遺憾ながらボツとする」

「おう……」

俺と北川はイスからごろんと床に転がり、立ち上がった。

「ふはぁ……頭ぼーっとするな……」

「逆立ちした後と同じだぜ…」

少しふらふらする。

「血を少し下にさげないとな……」

「おお…」

俺らは血を下げるため互いの肩をがしっとつかんでびょんびょん軽くジャンプする。

そして、ジャンプしながら名雪と香里に無言で接近してみる。

びょんびょんびょん。←接近

すたすたすた。←避難

びょん。←接近

すた。←避難

びょびょん。←接近

すたた。←避難

「「何故逃げる」」

「誰でも逃げるわよ」

「普通、逃げるよ〜」

2人とも俺らに絶対背中を見せないで避難していた。

「やってる俺らがいうのもナンだが、そりゃ逃げるだろうな」

「ああ、きっと俺らがやられても逃げるだろうしな」

アホなことをやっている間に頭のぼーっとしたのが治ったため互いの肩をつかむのを解除する。

「でもよぉ、ほんと、いつも黒板の方ばっかり向いてなきゃならないなんてつまらないよな」

「まあな」

北川は手を腰にあて、ややうつむきぎみで答える。血を下げすぎたか?

「だけど黒板見てなきゃ授業うけられないじゃないの」

やっとこさ俺らの近くへとやってきた香里が言う。それに名雪もうなずいて同意している。

「後ろを向いて教師の言葉から連想される黒板の内容をノートに書く。これはかなり高等技術だが普通に前を向くより授業に集中しなければならないぞ?」

「そうだな。本気で授業うけないと何がなんやらわからなくなるよな。さらにイマジネーションが必要だ」

「うーん、それはそうかもしれないけど…」

香里はやっぱり変よ、と続ける。そりゃ変だが今は変なことを提案してるんだから当たり前だ。

「または机を左か右に向けて横目でちらちらと黒板を見るとか」

「おおー、むしろ人間より馬などの草食動物系に願ったりかなったりな提案だな」

「ああ!」(さわやか)

「その前に馬が校舎内にいること自体問題よ」

「祐一、馬にうれしい提案しても意味ないよ〜」

いや、俺は動物が喜ぶことなら何でも喜びそうなやつを知っているが……。

「じゃあ、相沢。次は俺の提案だ」

「なんだ?」

「二教科融合授業」

北川が両手でピースサインをしたと思ったら、二教科の二を意味していたようだ。

「なんだか真面目にすごそうな響きだな」

「いやいや、物理と数学の融合ならまだいいが古典と英語の融合となるとどうなると思う?美坂」

「古文を直接英文に直せ、とか?」

「ご名答。これは難しいと思うぞ」

「”いとをかし”が”It's so wonderful!!”になるってことか……」

北川はさらに続ける。

「現代文と物理なんか『祐一君に質量3kgの何ともいえない味のある物体が3m/sで横からぶつかってきたときに物体が彼の体に与える衝撃と心に負う傷を答えよ』とか出るんだぞ?」

「俺はその前に味のある物体が一体なんなのか気になって仕方ないが……」

「そこが現代文だ。物体に”味”があることによって心に負う傷の度合いが変わってしまう分、ただの物理より難しい」

「難、ここに極まれりか……」

俺と北川は二教科融合のすごさを思い知った。

名雪と香里の2人は聞いてるばっかりで口を挟めない。いや、挟む気が起きないのかもしれんが……。

「ああ。難で思い出した」

「ん?」

「ナンってカレーつけて食うやつだよな?」

「いきなり話がとんだな」

「一瞬何かと思ったわよ」

「ナン??」

北川と香里はとびすぎだといい、名雪にいたっては話についてこれてない。

「ナンを知らない人が『これ何だよ』って聞いたら『ナンだよ』って言われるんだろうな」

「あっはっはっは。座布団20枚!

「あげすぎよ」

「ナンだよナンだよ〜?」

名雪がさらに混乱している。

「う、ナンの話をしていたら無性にカレーが食いたくなってきた……」

「同じく」

「さっきパン食べたばっかりじゃない」

「でも食べたい」

「じゃあ放課後にカレー屋でも行ってきたら?」

「しまった……。午後の授業があるのか」

「仕方ないさ、相沢。カレーのために午後を生き延びようぜ」

「そうだな」

 

キーンコーロカーンコーロ。

 

予鈴がなった。

俺達がいくら授業のありかたを考えても、結局普通の授業をうけねばならない。

所詮は常識の枠にはめられた人間。

今日も無難という名の下で授業をうけるのだ。

そう、それは、運命……。

そして、それを変えることができるのは……奇跡。

「何をぶつぶつ言ってるのよ」

「なんかそれっぽい詩」

「…タイトルは?」

「放課後カレー」

「……今の詩にカレーなんか出てこなかった気が。ああ、もうなんでもいいわ……」

香里は疲れたようで、席に戻るなりぐたーっとしている。

隣の席の名雪はまだ混乱しているようだ。

「さ、授業受けるか!」

「おう!」

俺と北川は最高に元気だ。

 

 

終わり

 

 

 

コメント:

どうも、秒速約340m/s(空気中)秘書です。

授業変更してみました。

なんかもう、自分でコメントできるようなところが無いですね。アホすぎて。

うーん、SS作家さんには”この人はSS読んでる人なら絶対知ってる”みたいなすごい人もいるってのに私は間違いなくアンダーグラウンドなダメSS書きですね。

まあ私みたいのがメジャーになったら世も末ってなもんですが……。

そんなところでまた今度。


戻る そんなこと言う人嫌いです。 タバコを吸う人ケムいです。 みかん食べすぎな人黄色いです。