素敵なBirthday(前編)

『奇跡なんて、起きないから奇跡って言うんですよ』

昔の私が言い続けてきた言葉

『でも俺は、起きる可能性が少しでもあるから、だから、奇跡っていうんだと思う』

彼が言ってくれた言葉

今では私もそう思えるようになった

でも・・・起きた奇跡っていつまで続くの?

私は・・・・・・

「うう、寒い」

そういいながら祐一は、寝ている間に自分ではいでしまった布団をかけなおした。

祐一が水瀬家に居候し始めてから1年が経つ。それでもやはり、この土地でむかえる冬の朝に祐一は慣れてはいないようだ。

今日は一応平日なのだが、祐一たちが通っている学校は、何かの代休らしく、休みとなっていた。

いとこの名雪あたりにでも聞けば、今日が何の代休なのかわかるのだろうが裕一にとってはそんなことはどうでもよかった。

今はただぬくぬくとした布団の中に身を沈めるだけである。

秋子さんももう仕事に行ったみたいだし・・・

そんな時、

「こん、こん、こん、」とドアをたたく音。

祐一はこれをあえて無視することにした。

かちゃっ

「祐一、起きて」

返事も聞かずにドアから入ってきたのは名雪だった。

仕方なく、祐一は体を起こした。

「なんだよ、今日は休みだろ。もう少しゆっくり寝かしてくれよ」

そういいながら祐一は目覚し時計を見た。まだ9時である。

もう一度寝よう。祐一がそう思っていると、

「ねえ、おきてよー、祐一ってばー、電話だよー」という名雪の声。

誰からだ?そんなことを言いたそうな目で祐一は名雪を見た。

そんな視線に気づいたのか、名雪はこういった。

「美人の女の子から」

祐一はベッドから跳ね起きると急いで電話のあるところまでいった。

「もしもし、相沢君?私。香里」

電話の主は、同じクラスの美坂香里だった。

確かに顔は悪くないが・・・、なんか違わないか?

何を想像していたのかは分からないが、どうやら祐一の願望にはそぐわなかったようである。

そのときになって祐一は初めて気が付いた。電話で顔がわかるわけが無いと。

つまり、まんまと名雪にはめられたということだ。

それはさておき、

「ところで何の用だ?名雪じゃなくて俺に電話してくるってのは」

「実は・・・・・・」

香里は少し言いづらそうにこういった。

「実は、栞がいなくなっちゃったの」

「栞が?」

栞というのは、香里の1つ下の妹で、去年の冬、あることがきっかけで祐一が知り合いになった少女だ。

一応祐一の彼女でもある。

「それでいつからいないんだ?」

「今朝、朝食を摂ったときはいっしょだったんだけど・・・・・・」

「ということは今朝まではいたってことか・・・・・・ってちょっと待て!」

祐一は急に体から力が抜ける感覚をおぼえた。

「そういうのって『いなくなった』じゃなくて『出かけた』って言うんじゃないのか」

「うっ・・・それはそうなんだけど・・・・・・」

少しだが動揺する香里。

なぜ動揺する?

そんな疑問ももたなくもなかったが、祐一は香里の答えを待つことにする。

「それは・・・・・・その・・・・・・、そうそう、あの子体が弱いじゃない」

どうも言い訳くさい。

「外、雪降ってるし・・・何かあったら困るじゃない。それに私に何も言わないで出かけるのも変だし・・・・・・」

最後の言葉が何か引っかかった。

他の人ならまだしも、大好きなお姉ちゃんに何も言わないで出て行くというのは栞にしては変である。

全く顔をあわせていないわけでもないのだから、一言くらい何か言っていってもいいはずである。

「分かった。」

「えっ?」

「俺も心当たりのあるところを探す。香里も何か分かったら、名雪にでも伝えといてくれ」

「本当?」

「うそをついたところで俺に何の得があるんだ?ともかく今出るから」

そういって祐一は電話を切ろうとした。

「・・・・・・ありがとう」

「ん?なんか言ったか?」

「ううん、なんでもない。それじゃ」

電話を切ると祐一は急いで着替えて靴を履いた。香里の話し方には確かに何か引っかかるものがあった。

しかし、それにも香里なりの理由があってのことだろう。特に気にしない。

それにもし、本当に栞の身に何かあったのだとしたら・・・・・・

休みの前の日、栞が学校を早退していたことを祐一はこのときになって思い出した。

香里の言う通り、外は雪模様だった。

「祐一、出かけるの?」

祐一の思考を止めたのは、そんな名雪の一言だった。

「ああ、ちょっと出てくる。昼までに戻ってこれないかもしれないから、昼は先にひとりで食べてくれ」

あと、香里から電話があったら、話聞いといてくれ。

そう付け足して、祐一は外へとんで出て行った。

「うん、分かった。」

閉まりきったドアに向かって名雪はそう言った。

しかし名雪は知っていたのだ。祐一が昼までに帰ってこないことも、香里から電話がくることなんてないことも・・・・・・

「ふぁいと、だよ。祐一」

つづく

<あとがき>

えーっと、はじめまして、しのむんです。以後お見知りおきを。

今回は栞編という事で書かせてもらいました。

え?どこに栞が出てきたんだって?

大丈夫です。後でたっぷりと出てきますから。

こういうものを書いたのはこれが初めてなので、ちゃんとした話になっていないかもしれませんが、

ま、大目にみてやってください。

そういうわけで、「素敵なBirthday(中編)」もお楽しみに!

 

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