素敵なBirthday(後編)

 

向かい合ったままの祐一と栞。

二人の距離がだんだん縮まって・・・・・・

 

ぐうう

あともう少しというところで、祐一の腹の虫が鳴いた。

「またこれかい!」

1年前にもこんなことがあったような気が・・・

「ふふふ、お約束ですね」

「ああ・・・お約束だな」

今はお昼時。朝食も食べずに家を出た祐一には相当こたえているのだろう。

「そろそろお昼にしましょうか」

「そうだな」

そう言って祐一は栞にかけていた手を離す。

チュッ、と軽くキスするのも忘れずに。

 

「さあ、どれがいいですか?」

噴水のところに腰掛けて、栞は家から持ってきていたバスケットを開いて中身を取り出した。

中からは、おにぎり、サンドイッチ、唐揚げや卵焼きなどのおかず類が次々と出てきて、

そして案の定、バニラアイスが沢山出てきた。

 

「ところで、栞はここで何をしてたんだ?」

祐一がおにぎりをほおばりながらそう聞くと、

「雪だるまでも、と思いまして」

バニラアイスを食べながら、栞が答える。

なるほど、確かに祐一の目の前には、大きな雪球があった。

その直径、1メートル強。

「で、これが胴体なのか」

一応聞いてみる。

「いいえ、これは頭のほうです

「冗談、だよな」

「私はいつでも本気ですよ」

頭が1メートルだと、バランスからいっても全長は3メートル程度になる。

つまり、祐一よりも背の高い雪だるまだ。

「百歩譲って2メートルの雪球が出来たとして、誰がそれにこの頭を乗せるんだ?」

「祐・一・さん(ニッコリ)」

「どー考えても無理だ」

「根性のない人ですねー」

「・・・いや、だから根性とかって問題じゃないんだって」

「・・・ですよね」

いくら可愛い笑みで頼まれても、こればかりは人道ではない。

まあ、去年の「10メートル雪だるま」よりはましか。

「よし、じゃあ雪だるま作るか」

「でも・・・」

「ああ、確かに巨大(?)雪だるまは無理だ。そこでな、」

そこでいったん話を切ると、栞に耳打ちする。

ごにょごにょごにょ。

ぽん、と手を打って栞も同意する。

「それ、いいですね」

 

それから数十分後。

二人の周りには普通の大きさの雪だるま一つと、多数のミニ雪だるまが行儀よく並んでいた。

大きさがダメなら数で勝負だ、とでもいったところだろうか。

当の二人は、というと、また噴水のふちに座っていた。

 

「栞、」

祐一は唐突に話を切り出した。

「何ですか?」

「いや、あの・・・よくここには来るのか?」

「ええ、まあ。でもどうしてそんなこときくんですか?」

「つらく、ないのかと思って」

祐一にはやはりそのことが胸につかえているようだ。

なんとなく目を合わせづらくてうつむく祐一。

「全然」

いともあっさりと答える栞。

祐一は驚いて、顔を上げた。

「確かに、ここに来るたびにいろいろなことを思い出します。 苦しかった闘病生活、私に冷たかったお姉ちゃん、過ぎ去っていった日々。

 『誕生日なんてこなければいいのに』なんて思ったこともありました。

 そして、祐一さんに別れを告げた、あの日のことも。

 つらい思い出もなかったわけではありません」

でも、そう言って栞は続ける。

「でも、そういう過去があったからこそ、今の私があるんだと思うんです。

 今までつらかった分、これから幸せになれるんだって信じれるんです。

 そして・・・祐一さんに出会えたんだと思うんです」

祐一に微笑みかける栞。こころなしか目が潤んでいる。

「だから・・・だから・・・この公園も、自分の誕生日も、そしてもちろん祐一さんもだーい好きです」

いまはもう満面の笑みを浮かべている。

本当に栞は強いな。

栞の話を聞いて、祐一は自分のちっぽけさを思い知った。

『栞のため』だなんて、本当は単なる俺のエゴだったんだ。

「俺も、栞のことがだーい好きだぞ」

栞を真似てみた。

「・・・すごく恥ずかしいこと言ってますよ、祐一さん」

いいんだ、今日ぐらいは。

「さて、もう少し雪だるま作るか」

照れ隠しのつもりなのか、栞に背を向けるとせっせと行きだまを作り始めた。

「よし、わたしもがんばるぞー」

急いで祐一のそばへ行き、作業を手伝う栞。

このとき祐一は、心の中であることを決意していた。

栞の『これから』は俺が絶対幸せにしてやろう、と。

 

もうすぐ夕方。

二人の影も、だんだん伸びていく。

 

 

 

 

   あれから1年の月日が経った

   この1年で私も随分変われたと思う

   ううん、これからも変わっていけると思う

   少なくとも今日は

   だって今日は、

   素敵なBirthdayだから!

 

 

<Fin>

 

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   あとがき

お久し振りねの3年振り(フ○ンソ○ーズ?)、しのむんです。

元ネタ、誰も知らないだろうなぁ。

ヒントは、有名(かな?)少女漫画です。

 

さて、ようやく後編を終えていったん落ち着いたこのSSですが、実は、あともう1話くらい追加しようと思っています。

まだ少し謎を残したままなので。(香里とか、名雪とかね)

一応それはおまけみたいなものなので、あってもなくてもさほど変わりません。多分。

 

最後に、このSSを読んでくれた方々、そして私のミスで「投稿規定」まで書き直してくれたやまけんさんたちに、感謝感謝。

 

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