素敵なBirthday(オマケ編)

 

「さてと、そろそろ帰るか」

祐一はそういうと、しゃがんだままの栞に手を差し伸べた。

あたりはもう暗くなり始めていた。

「そうですね。帰りましょうか」

少し照れながらその手を握る栞。

うーん、新鮮だね。

 

「今日はありがとうございました」

美坂家の前。家まで送ってくれた祐一に栞は御礼を言った。

「今日は本当に楽しかったです」

「ああ、俺も楽しかったよ」

楽しかったし、栞の思いも聞けてよかった。

「じゃあ、俺はここで」

そう言って立ち去ろうとする祐一。

「あの、ちょっと家へ寄っていきませんか?」

栞はそう言って祐一を呼び止めた。

「でも、家族団らんのパーティーとかあるんじゃないのか?」

「それは今度の日曜日にやることになってます」

「そうか、でももう帰らないといけないし・・・」

そこへ、

「ちょっと位いいじゃない。あがっていきなさいよー」

家の窓から、香里が顔を出してそう言った。

「お姉ちゃんもそう言ってますし、ちょっとだけでも」

「・・・そうだな」

そう言って祐一は美坂家へと入っていった。

 

「先に私の部屋にいっててください」

栞はそう言うとキッチンへ入っていった。

 

とん、とん、とん、

「来るわよ」

香里は足音を聞きつけて、他の人たちに注意を促した。

その部屋のドアの前で足音が止まる。

ドアが開いた瞬間、

「「「happybirthday!!!」」」

パンパンパン!

香里達は一斉にクラッカーを鳴らして祝いの言葉を言った。

しかし入ってきたのは、

「悪い、俺だ・・・」

「相沢君?!」

驚く一同(祐一を除く)。

「どうかしたんですか?あ!」

クラッカーの音を聞きつけて、栞がパタパタとやってきた。

「どうして栞が先に入ってこなかったの!」

香里は不満げだ。

「だってこんな仕掛けがあるなんて聞いてなかったから」

聞いてなかった?

祐一はその一言が微妙に気になった。

「・・・それにしても可愛いケーキですね」

栞は部屋の中央にあるテーブルの上を指差して言った。

テーブルの上には様々なパーティーメニューとともに、真っ白なケーキがあった。

生クリームの上から削ったホワイトチョコレートがまぶされていて、飾りとしてお菓子で作った雪だるまが乗っかっている。

「でしょう。私たちの最高傑作なんだから」

最高傑作か。

さすがにこっちは買ってきたものではなかろう。

「特にその雪だるまっていうのが栞のらしいな」

「この雪だるまは名雪が作ったのよ」

「そうだよ〜」

香里の言葉に答える名雪。

・・・って、

「なんで名雪がここにいるんだ?」

「何でって、香里に呼ばれたから」

そう、朝名雪がとっさに隠したのは、この雪だるまだったのだ。

何でも、香里ひとり(正確には母親と二人だが)で作るのは時間がかかりすぎるということで、

三人でそれぞれ分担して作って持ち合わせた、ということらしい。

そう、三人である。

祐一はこのときはじめてもうひとりの製作者の存在に気がついた。

「君は確か、美化委員の」

「違います」

「風紀委員だったっけ」

「違います。私は、」

「図書委員、だろ」

「・・・わざとだったんですか」

そう言って、図書委員の子(名前はいまだにわからん)は脱力した。

「でもなんで君まで?」

「美坂さんのお姉さんからこの前お誘いを受けまして」

なるほど、香里らしいな。それにしても、

「仲のいい友達のことまで知っているとは、香里のシスコンぶりには頭が下がるよ」

「うるさいわね。悪い?それより二人とも座って。早く食べましょ」

香里のこの一言が、このパーティーの始まりだった。

 

「栞、」

隣でケーキを食べている栞に、祐一は声をかけた。

ちなみに、香里と名雪の二人は栞の友達とともに、ケーキのそれぞれが作った部分について批評しあっている。

「何ですか、祐一さん?」

「もしかして知ってたのか?」

「このパーティー以外は、ですけどね」

栞は「何をですか?」とは聞かずにそう答えた。

そう、栞は香里が何をたくらんでいるのか知っていたのだ。

よくよく考えてみれば、そう考えたほうが自然なことがいくつかあった。

祐一は、栞がたくさんの昼食を用意していた時点で気がついていたのだが、確かめる機会を逃していた。

「最初、お姉ちゃんが私に隠れて何か名雪さんと話をしていたんです。それで気になって・・・」

「聞き耳を立ててたのか」

「いいえ、名雪さんに何を話していたのか聞いてみたんです」

「まさか・・・」

「はい、全てばらしてくれました」

はぁ、とため息をついて祐一は脱力した。

名雪のことだ。「べ、別に栞ちゃんの誕生日の打ち合わせをしてたわけじゃないからね」とかいって、ずるずるとばらしてしまったのだろう。

あいつに隠し事をしろ、なんて無理なことだったんだ。

「祐一さんは?」

「何だ?」

「祐一さんは知らなかったのかなと思って」

知らなかった。全く。

「で、知っててその通りに行動したのか」

「はい。最初はお姉ちゃんのこと困らせちゃおうか、とも思ったんですけど、私のためにがんばってくれてるんだって思ったら、うれしくなって、

 その通りに行動してました。

 もちろん、祐一さんがプレゼントを持ってきてくれることや・・・その・・・祐一さんとキスしそうになることまでは予想してなかったですけどね。」

「何をしそうになったって?」

いつのまにか香里が二人の目の前にいた。

「え?あ、あの・・・」

「栞!」

「はい、お姉さま」

「歌うわよ!」

「え?」

唐突な姉のせりふに戸惑いながら、栞は香里に引きずられるようにして祐一に前を去っていった。

そこから美坂姉妹による、息のぴったり合ったデュエットが始まったという事は言うまでもない。

そうやって、楽しい時間はあっという間に過ぎていくのだ。

 

「「「おじゃましました」」」

祐一と名雪と栞の友達は、三人そろってこう言った。

今日はもう遅いから、ということで、パーティーはついさっきお開きとなった。

「今日は私のためにこんな素敵なパーティーを開いてくださってありがとうございました。とても楽しかったです」

「私も楽しかったわ。またこういうの、やりましょうね」

玄関まで見送りに来てくれた栞と香里の言葉にみんなでうなずく。

「それじゃあまた明日、学校で」

 

美坂家を出る頃には、もうすっかり夜だった。

ゆっくりとした足取りで帰路につく三人は、T字路に差し掛かった。

「私の家、こっちなんで」

「あ、そうなんだ。じゃあここでさよならだね」

「そうですね。さようなら」

そんな会話を交わして栞の友達と別れる祐一と名雪。

名雪は、彼女が角を曲がるまでずっと小さく手を振っていた。

 

「ねえ、祐一、」

「ん?何だ、名雪」

「栞ちゃんが今日羽織っていたストール、もしかして・・・」

「ああ、俺がプレゼントしたやつだ」

ふうん、そうなんだ。いいなあ。

「何か言ったか?」

「ううん、なんでもない」

そうだよね。祐一にとって、私はただの従兄妹、栞ちゃんは大切な彼女なんだもんね。

「さて、急いで帰らないと秋子さんが心配するぞ」

そう言って祐一は走り出した。

「待ってよー、祐一〜」

名雪も後を追う。

 

今日は満月。

月明かりの中を、二つの影が駆けていく。

 

「あ〜疲れた」

祐一は家に着くとすぐに自分の部屋に戻って、自分のベッドに倒れこんだ。

今日はいろいろあったなぁ。

そう言って今日の出来事を思い出す。

そして、あることに気がつく。

“俺は今日一日香里たちの手のひらの上で踊らされていただけなんじゃないのか”と。

そう考えると少し腹立たしい。

結果的には名雪や栞にもだまされていたのだ。

・・・でも、ま、いっか。たまにはそんな日があっても。

そんなことを考えながら眠りに落ちていく祐一だった。

 

<おしまい>

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   あとがき

そんなわけであとがきです。(どんなわけだ?)

 

 しのむん(以下しの):「いかがだったでしょう。『素敵なBirthday(オマケ編)』は」

 ??:「SSのオマケなんて、もういらなかったんだ」

 しの:「どうして?楽しいのに」

 ??:「全然楽しくない。って言うかお前、せりふ間違ってるぞ」

 しの:「うぐっ、そんなこと言ったら君だって。そのせりふ、君のじゃないでしょう。祐・一・君」

 祐一:「ちっ、ばれたか」

 しの:「というわけで今回は祐一君と二人でお送りします」

 祐一:「誰と話してるんだ?」

 

 祐一:「ところでどうしてオマケ編なんて書く気になったんだ?」

 しの:「本編ではほのラブ、オマケではギャグをやるというのがこの話を書き始めるにあたっての予定だったんだよ」

 祐一:「これのどこがギャグ?それにオマケの割には本編なみに長いし」

 しの:「だから予定だったんだって。最初はギャグで書いてたんだけど全然面白くなかったんで書き直したの。

     そうしたら、この通りです」

 祐一:「ギャグの素質0って事か」

 しの:「あうーっ、そんなあからさまに言わなくってもいいじゃない。

     それにそのおかげで君もいい思いができたんだし、よかったんじゃないの?(ニヤリ)」

 祐一:「そりゃ・・・よかったけどさ」

 

 しの:「そんなわけで、このシリーズはこれで終わりです」

 祐一:「お前指示語使いすぎだぞ。前に一度注意されただろ」

 しの:「そうでした・・・って話の腰折らないでね。もうしめなくちゃなんだから」

 祐一:「確かに。このままじゃあとがきまで長すぎちまうもんな。

     で、本当に最後なんだろうな、このシリーズ」

 しの:「・・・はちみつクマさん」

 祐一:「もういいや。

     それでは、こんな駄文あとがきまで読んでくれた方々に、感謝感謝」

 しの:「あっ、それ私が言おうと思ってたのにー」

 

 

最後に、

「祐一はそんなにガラの悪いキャラじゃないぞー」とお怒りの祐一ファンの皆様、

ごめんなさいm(__)m

 

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