<思い出のストール編>

夢の中へ・・・

 

最近お姉ちゃんに避けられているような気がする

なんでだろう

私が病弱だから?それで皆にも迷惑かけてるから?

ねえ、お姉ちゃん・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと栞は家の中とは違う場所に立っていた。

あれ?ここはどこでしょう。

そして私は何故ここにいるのでしょう?

 

 

 

栞はじっとしていても始まらないので、歩き回ってみることにした。

「あれ、ここって・・・商店街?」

そう、さっきから栞が歩き回っていたのはいつも祐一たちと一緒に訪れている商店街だった。

「でも何かが違う」

栞はこの場所に違和感を感じていた。

そして何気なく近くの店にあるカレンダーを見る。

「10年前の1月6日?」

栞の見たカレンダーは、確かに10年前の1月6日になっている。

「そうか、きっと私は夢を見ているんですね」

そう言ってその場を離れようとしたそのとき、

「きゃっ」

ドンとぶつかった衝撃とともに、小さな悲鳴が聞こえた。

「いたたたた、・・・あっ、すみません」

そう言って悲鳴の主は栞に謝った。

栞の目の前でぺこりと頭を下げているのは、少しウェーブのかかったロングヘアーの女の子。

「大丈夫?」

栞もそんな健気な女の子に声をかける。

「はい、わたしはだいじょうぶですけど、おねえさんは?」

「わたしも大丈夫よ。気にしないで」

女の子の目線に合わせて、栞はかがんで言った。

「そうですか。じゃあ、わたしはいそぎますんでしつれいします」

そう言って少女はもう一度頭を下げると、栞の脇をぬって走っていった。

「随分しっかりとした女の子でしたねー。でもあの子、お姉ちゃんに似ていたような・・・」

まさかね。だってお姉ちゃんがあんなに小さいはずが・・・

「ありえる!」

普通ならありえないことだが、ここは10年前の世界なのだ。

香里の実際の年から考えても、10年前の香里がその少女ぐらいであっても不思議はない。

「あとをつけてみよう」

栞はさっき少女が走っていった方へ歩いていった。

 

 

 

走る、といってもそこはやっぱり子供。それほどの速さは出せない。

だから、あまり体力のない栞でも楽に追いつくことが出来た。

少女は、栞の追跡にも気づかずにある店へと入っていった。

そこで少女はなにやら大きな布を買っているようだった。

 

店を出た少女はまた走り出した。さっきから走りどうしで疲れないのか、と栞は心配になったが、少女の顔は笑顔でいっぱいだった。

まるでこれからとても楽しいことがあると知っているように。

 

栞は少女のあとをつけながら、あることに気がついた。

「この道、もしかして・・・」

栞には少女がどこへ向かっているのかが分かっているようだ。

この道をまっすぐ行って、二つ目の交差点を右に曲がると、

「やっぱり」

そこには栞が―――しおりが入院している病院があった。

 

 

 

210号室。そこが少女の入っていった病室だった。

こんこん、がらがらがら

「あ、おねえちゃん!」

ベッドに寝ていたしおりは来訪者を見るなり、うれしそうにそう言って起き上がろうとする。

「あ、おきあがらないでいいわ」

かおりはそう言ってしおりを制すと、ベッドの脇の椅子に腰掛けた。

 

「それにしても、きょうはずいぶんごきげんじゃない」

しおりはかおりが訪ねてきてからずっと、ニコニコしながらかおりを見ていた。

「だっておねえちゃんにあえたのがひさしぶりだから」

「ひさしぶりっていっても、さいごにきてからまだ1しゅうかんもたってないのよ」

「まいにちきてくれなきゃダメだよ」

かおりも出来ればそうしたかったのだが、正月ということもあって、大人の事情がそうさせてはくれなかったのだ。

 

「そうそう」

急に思い出したかのように、かおりはさっきの紙袋を取り出し、

「はい、これ」

紙袋の中身を出してしおりに渡す。

「なに、これ」

「これはね、すとーるっていって、はおるものなのよ。しおりがさむいといけないから、いえにあるのをもってきたの」

紙袋の中から出てきたのは、オレンジとこげ茶のチェック柄のストールだった。

そう、栞がいま羽織っている物と同じ柄の。

しおりはストールを物珍しそうに見て、かおりの言う通りに羽織ってみせた。

「うわあ、あったかーい」

「そうでしょう」

「でも、わたしにはすこしおおきいみたい」

これじゃまるでお化けだね。そう言って二人は笑いあった。

 

 

 

病室の外で様子をうかがっていた栞は、すこし開いていたドアをそっと閉めた。

思い出をそっと包み込むように・・・

そして栞は思った。わたしのお姉ちゃんは世界一優しいお姉ちゃんだと。

自分のお小遣いをはたいてでも妹へのプレゼントを調達したかおり。

小学校低学年の子供に、ストールを買うだけのお金を準備するのは大変だっただろう。

欲しいものを我慢したかもしれない。家の手伝いをたくさんしたかもしれない。

それでも妹の前ではそんなことを微塵も見せない。

嘘までついて・・・

 

 

 

「さて、帰ろっかな」

そう思った栞だったが、

「あ、ここは夢の中でしたね」

そう思いながらも、病院を後にしようと廊下を歩き始める。

ある決心をして。

 

「・・・おり」

誰かに呼ばれた気がして、栞は後ろを振り返った。

しかし、そこには誰もいなかった。

気のせいですね。そう思ってまた前を向く栞。

「・・・おり」

「しおり」

「栞!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「栞!起きなさい!」

「あれ、お姉ちゃん?」

栞はゆっくりと起き上がり、あたりを見回した。

何の変哲もない部屋。美坂家のリビング。

「『あれ、お姉ちゃん?』じゃないわよ。こんなところでテレビもつけっぱなしで」

そうでした。ソファーに座ってドラマを見てて、そのまま寝ちゃったんですね。

「まったく・・・」

そう言って栞を怒っているような香里だったが、香里の目には一粒の涙が浮かんでいた。

「学校から帰ってきたら、あんたがソファーに倒れてて・・・声をかけても反応がなくて・・・
 もしこのまま起きなかったらどうしようかと思って・・・・・・」

香里は震えながら続けた。

「本当に心配したんだから!」 

そう言って、栞に背中を向けた。

そして、リビングを後にしようとする香里。

「お姉ちゃん!」

栞は呼びかけるが、香里は振り向かない。

「お姉ちゃん・・・ありがとう!」

それを聞いた香里は、走るようにして自分の部屋へ去っていった。

 

 

 

今発せられた言葉が、心配してくれたことについてなのか、それとも10年前のお礼なのかは定かではない。

だが、一つだけ言えること・・・

栞の顔は笑顔でいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

今、思い出したことがある

ずっと忘れていた、遠い日の思い出

小さな、小さな二人の少女が

笑顔で話をしている思い出

何を気にすることもなく

何を恐れることもなく

二人で楽しく紡いできた思い出・・・

 

 

 

 

 

 

大切なことを忘れてた

お姉ちゃんがどれだけ私を可愛がってくれていたのか

お姉ちゃんがどれだけ私を心配してくれていたのか

そして・・・

私がどれだけお姉ちゃんのことを好きだったのか・・・

 

嫌われててもいい

無視されててもいい

それでも私は

それでも私は

お姉ちゃんが大好きだから

 

 

 

<fin>

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  あとがき

そんなこんなであとがきです。

 

しの「今回のゲストはもちろんこの人」
栞「今日はー。栞ですー」
しの「今回は栞ちゃんと二人であとがきやらせてもらいます」
栞「よろしくお願いします」

 

栞「一つ質問してもいいですか?」
しの「はい、何でしょう」
栞「どうしてこれを書く気になったんですか?」
しの「それはですね、Kanonのヒロインの中で君だけ『過去』があまり語られてないでしょ」
栞「はい」
しの「それで『しおりんだけ無いんじゃかわいそう!』とか思ったわけだ」
栞「そういうことだったんですか」
しの「そういうことです。ちなみに、いつ頃の話かというと、祐一に会う少し前くらいですね、だいたい」

 

栞「でもこのSS、本当は成り立たないんですよね」
しの「どういうこと?」
栞「だってゲーム内で、ストールをもらったいきさつとかありましたよね」
しの「え?うそ?」

 

作者、Kanon(栞シナリオ)をやる

 

しの「あ、本当だ。一年前って事になってる」
栞「どうするんですか?」
しの「・・・その辺は大目に見てもらおう」
栞「無責任ですねー」
しの「無責任ですよー」

 

しの「そんなわけで、栞ちゃん、今日はありがとうございました」
栞「いいえ、こちらこそ・・・って内容について触れなくても良いんですか?」
しの「それやると本文の2〜3倍くらいかかるからやめとく」
栞「そうですか。それじゃあ、しめましょうか」

 

しの・栞「こんな駄分アンドあとがきにつき合ってくれた皆さん、ありがとうございました」
しの「いや、マジ、ほんとに」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

   あとがきついで

香里「ちょっといい?」
しの「あ、香里さん。栞ちゃんだったら今帰りましたよ」
香里「あなたに用があるのよ!」
しの「・・・何か怒ってます?」
香里「何で『実際の年』ってところが太字になってるのかな?」
しの「それはだってあなた。見た目がおば・・・ってなに持ってるんですか、香里さん!」
香里「見た通りよ」
しの「私にはマシンガンにしか見えないんですけど・・・水鉄砲ですか?」

 

 

 

 

 

作者蜂の巣クマさんの為、強制終了

 

なんだかなぁ。

 

戻る