くすくす・・ただの雑談だよ

 

夢。

夢を見ている。

狂った夢。

世界が壊れる夢。

人が人でなくなる夢。

夢の中の僕は表情がなくて、でも死んでゆく人々のうめき声や叫びを聞いて心の中で嘲笑っている。

・・・人間は、なんて醜いんだろうと。

 

通学途中自転車をこいでいて、ふと思う。

”いまころんだらきっとイタイんだろうな”

僕はフッと体重を右にかける。転ぶ瞬間、背中がゾクッとした。

ズザザザザザーーーーー・・・・。

すごくイタイ。

イタイけど、気分がいい。

僕のヨソウドオリだったから。

自転車のタイヤは僕のことなんか知らないかのようにカラカラと回る。笑い声みたい。

僕はつられて笑った。

 

・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

ちりちりちりちり。←電波目覚まし時計

ばしっ。

「朝か・・・」

また気持ち悪い夢見ちゃったなぁ。やだやだ、あれじゃ半狂乱だったころを思い出しちゃうよ。

ムカシ授業中にやってた妄想と同じシチュエーションの夢も見た気がするしなぁ。

僕は頭を振ってヤなイメージを忘れようとする。

そしてなるべくプラス方面に気分をもっていこうと試みる。

プラス思考・・プラス思考・・。

「そーいえば昨日行ったラーメン屋のシナチクがいつもより一枚多かった!」

僕は若干プラスな気分になった。

その状態のまま着替え、朝御飯を食べ、準備をして家を出る。

 

プラス思考の秘策は瑠璃子さんから伝授してもらった。

瑠璃子さん曰く、

「長瀬ちゃんはもっと世の中を楽しんだほうがいいよ」

だそうで。

でも、そのときの瑠璃子さんの電波は、はっきりとこう言っていた。

「キモいよ、ネクラ」

僕はこれが本当の毒電波だと思った。

 

半分眠ったままの状態で学校に着くと、クラスの数人と挨拶を交わす。

以前の怪しいオーラがなくなってきたのか、僕にも少しずつ友達が出来始めた。

友達ってのは結構、楽しいと思う。

昔はそんなもん邪魔なだけだと思ってたのに、人はいつ変わるかわからないもんだ。

「テスト勉強してきたか?」

「・・・はえ?」

友人に言われ、思い出した。今日は数学の章末テストだった。

「や、やってない」

「よし、まず一人撃沈」

そいつは撃沈リストと書かれたメモ帳に僕の名前を記帳する。

・・・・意味不明なことはやめれって。

 

テストは5時間目だ。昼休みにかけるしかない。そう思った。

 

〜〜〜昼休み

僕は昼食をとるのもそこそこに、勉強をはじめようとする。

はっきりいって面倒だ。

・・・・今さらやってもあまり変わらないよな。

こういう場合、正攻法でいってもたいして結果は得られない。自分を合理化しようとしてしまう。

ならば・・・・

 

1.電波をつかって教師を壊す

2.仮病

3.死んだフリ

 

・・・僕にどれを選べというのだろう。バカも休み休みにしてほしい。

 

・・だが、どうしても選ばなければならないというなら、せっかくなので3を選ぶことにする。

なるべく自分をおいしい方向へもっていくのが基本だと瑠璃子さんも言っていた。

パタリ。

僕は倒れた。

・・・・・・ワイワイガヤガヤ。

・・・ワイワイガヤガヤモーモー。

教室は生徒の喧噪ばかりで、僕に気付く様子が全くない。

・・・・・・・。

・・・・・。

”誰かつっこんでくれ!!”

・・・・・・。

ちり・・・・ちりちり・・。

”・・・・ん?”

そのとき、僕は電波らしきものを受信した。

瑠璃子さんだ。間違いなく、これは瑠璃子さんの電波だ。僕を呼んでいるらしい。

僕は仕方なしに死んだフリを放棄して立ち上がり、教室を出る。

彼女は”なんとなく”で僕を呼び出すようなことをする人じゃない。重要なお知らせでもあるのだろうか。

僕は瑠璃子さんのクラスへは行かず、直接屋上へ向かう。

屋上にいるような気がしたから。

そして、瑠璃子さんは・・・いた。

「瑠璃子さん、僕のこと呼んだ?」

屋上へ出ると、今日はとても暖かいことに改めて気付いた。

「長瀬ちゃんだよ、呼んだのは」

瑠璃子さんはいつもの焦点のあわない目で”何か”を瞳にうつして、ほほえみながら言った。

「え?僕?」

確か僕は呼ばれたはずなんだけどなぁ。

「長瀬ちゃん、言ってたよ。”誰かつっこんでくれ!!”って」

「・・・・へ?」

「だから私がつっこんであげるよ」

「・・・・・・」

「何やっとんねん」

ガシャーン。

僕は瑠璃子さんのあまりの間抜けさに力が抜け、フェンスに頭をぶつけた。

「くすくす、長瀬ちゃん、つっこんでもらってうれしい?」

「・・・うん、涙が出るくらい」

「そう、よかった」

涙が出るくらいくだらないよ・・瑠璃子さん・・・。

僕はフェンスに頭をもたげたまま目を閉じていた。

「今日はいい風だね」

瑠璃子さんの話はいつも唐突にかわる。

僕はゆっくり目をあけ、瑠璃子さんの方を見る。

「そうだね」

別に話を合わせたつもりはない。事実、春の陽気も手伝って、とても気持ちがいい。

風にふかれ、瑠璃子さんの髪もさらさらとなびいている。

「長瀬ちゃんは花粉大丈夫?」

この時期、花粉症の人には辛い。(ビビンバ吉田もひどいらしい)

だが、僕はそういう症状がでたことはない。

「僕は平気。瑠璃子さんは?」

「少し、かな」

やっぱり、と思う。瑠璃子さんってそういうのに敏感そうだもんな。

「くしゃみとか出るの?」

「電波が漏れるの」

「病院行きなさい!!」

「少しだから大丈夫だよ」

少しでもダメだって!!

「量の問題じゃないよ。電波バラまいたら変質者倍増しちゃうよ!春はただでさえ多いのに」

「くすくす、変質者倍増計画実施中だね」

「やめーい!!」

全く、とんでもない花粉症だな、瑠璃子さんのは。

しかも当人はくすくす笑ってるだけで聞く耳持たずだし・・。

「・・・・・あ」

「・・・」

ちり・・ちり・・ちりちり・・。

「っていうか今まさに漏れてるよ、瑠璃子さん!」

「うん、そうだね」

瑠璃子さんは他人事のように落ち着き払っている。

「だから早く止めてよ、その電波!」

「電波は急に止まれない」

「交通標語みたいなこと言わなーい!」

「くすくす・・」

はぁ・・・疲れた。

ま、僕にしか届かないような弱い電波だからいいか・・。←良くない

それに瑠璃子さんの電波ってきれいだし。見てて飽きないもんな。

ちり・・・・。

ちり・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・・・。

あ、止まったかな。

「ほら、収まったよ」

「・・う、うん。そだね」

「放っておけばそのうち止まるから大丈夫」

「本当に花粉症なんだね・・」

「実はお兄ちゃんもなんだ。しかも私より重度の」

「マジで?!」

月島さんのクラス・・大丈夫かな・・・。

 

〜〜そのころの月島のクラス

「きゃあああああああ!!やめてぇぇぇぇぇえぇええぇえぇ!」

「・・っっぅっぅぅぅああああ!たたたたたたたすすすすすけけけけててててて・・・・」

「・・・だだだ・・だれか・・止めて・・」

「アハハ・・みんなごめん。止まらないんだ、花粉症で・・・」

月島はポリポリと頭をかいた。

「月島ーーー!!てめぇかああああああ!!ととととめろろろ・・!」

「・・・・・」←失神中

「ほんと、ごめん。そのうち止まるから・・」

大パニックでした。

 

〜〜〜

「なんか恐ろしいことになってる気がする・・」

「うーん・・・」

さすがの瑠璃子さんでも心配らしい。

・・・・・・。

・・はて、何か忘れていたような。

「どうしたの長瀬ちゃん」

僕が何やら眉をひそめているのに気付いたらしい。不思議そうに尋ねてくる。

「うーん、なんか忘れて・・・。あ、数学のテスト!」

思い出した、次の時間章末テストだった。

「簡単だったよ、あのテスト」

「でも僕は瑠璃子さんみたく勉強できないんだから」

瑠璃子さんは学年でもトップの方の成績だ。対して僕は中の下。

つまり、瑠璃子さんの”簡単”は僕には全く当てにならない。

「はあ、今から勉強しても無駄だな」

ため息をつく。

「ごめん長瀬ちゃん」

「い、いやっ、瑠璃子さんは関係ないよ。忘れてた僕が悪いんだから」

少しうつむいて申し訳なさそうにする瑠璃子さん。

どうやら”瑠璃子さんのせいで勉強ができなかった”みたいに聞こえてしまったらしい。

「・・・それに昼休みちょっとやったくらいじゃ変わらないしね」

元々勉強してこなかった奴が昼休みやった程度でできるほど世の中甘くない。

「怒ってない?」

「怒ってないよ」

「よかった」

瑠璃子さんは胸をなで下ろす。本当に悪いと思っていたらしい。

「でも、テストなんかなけりゃいいのにな。瑠璃子さんは思わない?」

僕がグラウンドを見下ろしながらいうと、瑠璃子さんも同じように見下ろしながら言う。

「だけど、合格したときってうれしいよ?」

「うーん、でも僕はこの高校に合格したことくらいしかないからねぇ」

平凡な生活を送ってきた僕にとって”合格”なんて縁のない言葉だ。

「もう一つあるよ長瀬ちゃんは」

「え?何かあったっけ?」

なんともアホなことを聞いてしまった。本人が”無い”って言ってるのに、あるワケないじゃないか。

しかし、瑠璃子さんは答えた。

「私のテスト、合格してるよ」

いつもの、焦点の合わない目をして。

「あのとき、私のことも、お兄ちゃんも助けてくれたから、合格」

「・・・・・」

少しほほえんだような表情で言われると、なんか気恥ずかしい。

「でも、いいね、合格って」

「でしょ?」

自然と頬がゆるんでしまう、そんな気がした。

 

−キーンコーロカーンコーロ・・・

 

「あ、予鈴だ。じゃ、テストだから先に行くね」

「うん、またね」

テストなので、早めに行かないと間に合わない。

僕は屋上の出口へ向かって走り出そうとすると、小さく”あっ”と声をあげるのを聞いた。

「ん?何?」

瑠璃子さんのほうを振り向く。

「合格のおまじない」

そう言って、僕のほうへ寄ってくる。

「頭下げて」

「・・・?」

言われたとおり、頭を下げると僕の頬に手を当ててくる。

突然なので少しあせったが、・・・やっぱりひんやりして気持ちいいなぁ、と思う。

「目を閉じて」

目を閉じる。

・・・・・・・。

ちり・・・ちりちり・・・。

電波・・・?

・・ちりちり・・ちり・・。

・・・あっ・・これって・・・。

ちりちり・・ちりちり・・。

・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・。

電波が止まると、僕は目を開ける。目の前にはやっぱり瑠璃子さんがいた。

「はい、テスト頑張ってね」

「ありがとう。また助けてもらっちゃったな」

「今度はちゃんと勉強しなきゃだめだよ」

「うん、わかった。あ、先行くね。じゃ、また今度」

僕は意気揚々と走りだす。でも、早くしないと本当に間に合わないって・・。

 

−キーンコーロカーンコーロ・・

 

---その日のテスト、僕は94点というかつてない好成績をたたきだした。

ありがと、瑠璃子さん。

今度お礼言っとかなきゃな。

 

でも、もしかすると今度はちゃんと勉強して、瑠璃子さんを助けなきゃならないのか・・?

それってあのときより辛いかも・・。

まさか瑠璃子さん、計算済みってことは・・・。

いや、そんなことないよな・・・、成績悪いこの僕に・・・。

 

と、そのとき瑠璃子さんの電波らしきものが届いた。

ちり・・ちりちり・・・・。

「くすくす、今度は長瀬ちゃんの番だよ」

・・・本当の・・・どく・・でん・・・ぱ・・・・。

・・・・はぅっ。

 

終わり

 

コメント:

初めまして、音速秘書と言います。っていうかわざとらしいんだよ、と思った方、正解です。
雫の二次創作を書くのは今回が初めてです。
なんてことはない、雫では瑠璃子が一番好きなんで書いた次第です。はい。
月島の兄も好きですが、どう考えても”毒電波大決戦!”みたいな意味不明な話に
なりそうな気がしたんで、メインにまわすのはやめました。
読めばわかると思いますが、ほのぼのした話です。
オイ!そこで”どこがやねん!”とかつっこんでる奴!私がほのぼのって言ったらほのぼのなんだよ!!
最後の方は、少しだけほのぼの・・のつもりなんだってば。悪かったな、文章下手くそで。←態度が悪い
それでは、良かったら掲示板に感想下さい。文句も受け付けますが、”カルピスが薄い”とか、意味不明な文句はやめて下さい。

そうそう、冒頭の部分、あれは明らかにKanonのパクリですね〜。気付きました?


戻る 雫の次は痕書くのか? 一回書こうとして失敗したからイヤ←マジ話 じゃあto heartか? もう書いてます。