それは物理があった日

 

今日の物理の授業は”電波”だった。

「あ〜、電波にもいろいろとあって…」

「うぐっ…!」

あ、太田さん、苦しんでるよ。

「この、電波というのは主に波長が10のマイナス4乗メートルより長い、つまりマイクロ波、ラジオ周波、超低周波などが電波に属する」

「……うああっ…」

電波って言葉聞いただけで死にそうになる人って初めてみたなぁ・・。

 

そして、

「………おえっ」

授業が終わる頃には太田さんはぐったりしていた。

「太田さん、なんか気分悪そうだね」

「そーよ。その上ネクラ菌がうつるとあたし自殺しちゃうから寄らないで」

顔が真っ青になろうと関係なく毒舌は健在らしい。

「気分良くなるまでずっとついててあげるよ」(いい笑顔)

「あんな言葉、聞いただけで吐き気がするってのに…」

「ふーん」

面白い人だ。←お前が言うなよ

 

すたすたすたすた…

「でーんぱでんぱでんぱ。…やぁ長瀬ちゃん。今日はでんぱでんぱ日和だね。くすくすくす…」

すたすたすたすた…

 

「あ、あの小娘ぇ…!あたしに恨みでもあるの…?!」

太田さんはすでに荒い息すらしている。

「多分瑠璃子さんは遊び心満載な人なんだよ」(いい笑顔継続中)

「人で…遊ぶなぁぁぁ!はぁ……はぁ…」

 

すたすたすたすた…

「人を毒舌で殺してる女が何言ってんだか。くすくすくす…。でんぱでんぱ〜♪」

すたすたすたすた…

 

「あ…あたしは…くはぁ」

「もしかして太田さん、携帯電波、おっと、携帯電話持ってないでしょ?」

「…あ、あんなもんアナフィラキシー反応で死んでしまうわよ…」

「そっか、太田さんの弱点は先端技術全般…と」

「おいそこのネクラ…!メモんなっ!ハァ…ハァ…」

そして太田さんはその言葉を最後に息絶えた。

「殺すなっ!!ネクラっ!あんたあとで蹴り殺すわよ!!」

「でんぱっぱー」←弱点集中攻撃

「うあっ…やめて、ごめんなさい……」

くたっ。

太田さんは机に臥してしまった。

ちょっとやりすぎたかな?

 

 

放課後・・・

帰る用意を済ませ、さっさと家で電波っ娘育成シミュレーションのパソゲープログラムを組もうと思っていた矢先、変な女に呼び止められた。

「長瀬くん、もといそこのネクラ野郎…ちょっとお願いがあるんだけど」

「故意に間違ってるのかい?太田さん」

太田さんは歩けるようにはなったものの、まだまだ顔色が悪い。

今ここで適当に電波談義に花を咲かせようものなら彼女はあっという間に撃沈するだろう。

「あたし今日帰るから生徒会の人に言っておいて」

「へっ?何で僕が…。瑞穂ちゃんは?」

確か瑞穂ちゃんだって生徒会の役員をやっていたはずだ。

「瑞穂、今日は風邪で休みよ。じゃ頼んだわね」

「あっ、ちょっと」

しかし僕の言葉など届くほど太田さんは回復していなかったらしく、フラフラと

うつろな目のまま教室を出ていってしまった。

 

うーん、あのうつろな目をしてるときに電波の話を持ち込むと、撃沈どころか

消化器で殴られてたかもしれないなぁ…。話さなくて良かったかも。

僕はそんなことを思いながら通学バッグを片手に生徒会室へと向かった。

 

「で、どうして窓からのぞいているんだい?」

「…あれ?ついクセで…」

窓から生徒会室をのぞくシナリオを何度もやってたから、クセがついてしまったらしい。

何の疑問も持たずに窓から中を覗いてしまっていた。

間違って女子更衣室とか覗いたらシャレにならないから、直さないとな。

「そういや月島さんこそ、生徒会引退したんじゃないですか?」

「ああ、そうだけど今日の電波が”ここに来れば出演出来る”って言っていたからね」

「便利な電波ですねぇ」

っていうか営利目的(?)に使うなよ。前会長。

「まあね。それで用件は何だい?」

「太田さんが気分悪いから帰るって言ってました」

「そうか。会長、太田さんは早退だそうだ」

月島さんは後ろを振り返り、現会長へと伝える。中にはやはり瑞穂ちゃんの姿はない。

「用件はそれだけかい?」

「あと一つ」

僕はさっきから気になっていたことを言うことにした。

「瑠璃子をあきらめろっていう電波やめて下さい」

「ああ、すまない」

全く、シスコンじゃなければそれなりにまともな人なんだけど・・・・。

会った瞬間からちりちりちりちりとうざい電波で洗脳しようとするとは、恐るべしシスコン。

”新城に惚れろ”

「同じです」

電波にそんな命令出すなんて、アホなのかな、この人・・・。

「ハハ・・冗談だよ」←目が笑ってない

”藍原でも可!”

「月島さん、意外としぶといですね」

大体僕の方が電波能力が高いんだから洗脳できないと思うんだけどな・・。

「いやいや、ハハハ・・」

”るり〜ん♪”

「何すか今の楽しそうな電波は?!」

「い、いや…気にしないでくれ」←目が泳いでる

きっと間違った命令出したな。

「あ、月島さん、んなことより、太田さんがあなたのせいで電波恐怖症なんですよ」

「…へぇ、彼女にもレトロな趣味があったんだね」

ちりちりちりちり。←かなり本気

「うわっ!痛いっ!ごめん長瀬君、ちゃんと話聞くからっ!防御しきれないってば!いたいって!」

「月島さん本番(ゲーム中)の時より壊れてませんか?」

「お互い様さ」

ちりちりちりちり。←ひどい

「だからやめてって!痛い、しかもかゆいっ!何その、”痛がゆくなれ”っていう命令っ!」

「話聞いてくれますか?」

「聞くよ、聞くって」

端から見たらどっちが先輩かわかんないかもしれないな、この状況じゃ。

 

「太田さんは今日の物理の時間に電波の話が出ただけで死にそうだったんですよ!」

電波の話はさすがに生徒会室じゃできないので僕たちは場所をうつして話し出した。

「そりゃあ、重症だな」

「あなたが太田さんを壊したりしちゃうからですよ」

「うーん、とはいっても、あの頃の記憶は僕も覚えてないんだよ。どうしてなんだろう」

「そりゃ、僕……」

僕が月島さんの記憶を消したんだった、なんて言えるわけないって!

「でんぱっぱー」

僕は話をそらそうと、謎の言葉を発し、そのまま戦線離脱を試みた。

「待ちたまへ」

しかし失敗した。

「君、僕の記憶について何か知っているんじゃないか?」

「……」

「知っているのか?!」

やだなぁ、話が変な方向に進んできちゃったよ。

「…え、ええ。でも話していいんですか?」

月島さんはかなり興奮した様子で僕に近寄ってきた。ちょっと怖い。

これじゃ知らないとすっとぼけても無駄だろう。仕方ない。

「話してくれ。僕のなくした記憶を」

「いいでしょう。後悔しても知りませんよ」

「ああ」

僕は話し始めた。

 

 

「つまりそういうわけで”るりこ(らぶりー♪)の、るりこ(らぶりー♪)による、るりこ(らぶらぶ♪)のための政治♪”が執り行われるようになったわけだな」

「ええ。あなた人の話全く聞いてませんでしたね」

僕の心配は完璧に取り越し苦労に終わった。

「ハッハッハ。瑠璃子のことを考えていたら君の話なんぞどうでも良くなってしまってねぇ」

ちりちりちりちり。

すぱーん。←電波ハリセン

僕は月島さんを軽くはったおした。もともと壊れてたからこれぐらいでちょうどいいだろう。

「さて、帰ろうかな」

月島さんは床でぐったりと倒れている。変なポーズしてるし。

いいや、人の話聞かない天罰だ、もっと変なポーズにしておこう。

 

僕は月島さんを非常口のあの人のポーズをとらせた。しかも口は半開きだ。

結構時間がかかったが、いい汗をかいたので満足だった。

 

「あ、瑠璃子さん」

僕は帰ろうと思い、後ろを向くと常に右手を前に、左手を後ろに振りながら歩いてくる瑠璃子さんがいた。

「やぁ長瀬ちゃん」

一瞬歩みを止め、また歩き出して僕の前まで来た。それが何かを意味しているのか僕にはわからない。

やっぱり瑠璃子さんの行動は理解しがたいと思う。

「あ、お兄ちゃん」

瑠璃子さんは僕の後ろで倒れている月島さんに気付いた。

「お兄ちゃん…。ねぇ長瀬ちゃん、お兄ちゃん何かあったの?」

しかし変なポーズであることには触れないあたり、瑠璃子さんはきっとこれが変なポーズだと思っていないのだろう。

「うーん、あったというか、全ては彼自身の責任というか…」

僕は返答に困った。

「もう家に帰らなきゃいけないのに…」

瑠璃子さんはしゃがんで月島さんをゆすったが、それでも起きる気配はない。

すると、

「……なるとドンブリ」

瑠璃子さんは突如意味不明なことを言い出した。

「…盆栽パワー」

それはただの意味不明な言葉かと思いきや、月島さんがぴくっと動いた。

「…セキュリティ機能付き座布団」

さらに月島さんは反応する。

「…最終奥義・円周率インパクト」

そして瑠璃子さんが月島さんの頬に触れると、月島さんは目を覚ました。

「あ、瑠璃子、どうしたんだ?」

「お兄ちゃん、帰ろう」

その言葉を聞くと月島さんは勢いよく立ち上がった。さっきまで変なポーズで倒れていた人とは思えない。

「あ、ああ!そうだな、帰ろう!それじゃ、長瀬くん、明日もいい日でありますように!」←調子いい

「じゃあね、長瀬ちゃん」

二人は一緒に帰っていった。

 

僕は二人が視界からなくなったあとしばらくして、ようやく

「……何それ…?」

それが僕の精一杯のツッコミだった。

 

物理のあった、ある日のことだった。

 

 

 

終わり

 

「って、あたしの電波恐怖症はどうなったのよ!」

「ああ、別に太田さんに良いことをする義理なんてないし」

「あんた、ほんとムカつくわねぇっ!」

「でんぱっぱー」←祐介

「でんぱっぱー」←瑠璃子(いつの間にか教室に来てた)

「だから・・やめてえええええ!!」

 

終わり

 

おまけ:長瀬祐介のとまどいコーナー

「瑠璃子さん、一つ聞いていい?」

「いいよ」

「何で、お弁当・・全部なるとなの・・?」

「安かったから」

「・・・どこで?」

「マクドなると」

ぱくぱく・・・もぐもぐ・・。

 

僕・・笑った方がいいのかな・・・。

おまけ:終わり

 

おまけ2:長瀬祐介の驚きコーナー

「なっ?!月島さん何ですかそれ?!」

「るりコスプレ」

すたすたすたすた・・・

「なんだ貴様は!」←警察

「うわー!違うんだー!!」

 

・・・・なんか、泣けてきたよ、月島さん・・。

おまけ2:終わり

 

コメント:

こんにちは、音速秘書です。

太田さんはきっと電波が嫌いなんだろうなぁ、ということで書きはじめたはずだったのに、最後は月島兄妹の謎を残して終わるという、どうしょもない結果になりました。

つーことで、私は逃亡します。

アディオス。


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